ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

ページ
200/912

このページは 佐藤栄作論文集9~16 の電子ブックに掲載されている200ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play
  • Available on the Windows Store

概要

佐藤栄作論文集9~16

しかし現在国連の能力と活動が再評価され始めている。対ソ連の冷戦時は抑止力として威力を発揮した世界最強を誇るアメリカ軍でさえもポスト冷戦時代の平和への脅威-住民全員が兵士として武器を取る可能性のある民族紛争-にはさしてその実力を発揮することができず、むしろ国連の青いベレ-帽をかぶった中小国の兵士のほうが時には効果的な活動を行えるからである。他国に介入する場合、国連は「全世界の合意」というおそらく現在最も妥当性のある理由で内政干渉を行うことができ、PKOが成功する上で肝心な有能かつ現地の事情によく通じた人材への幅広いアクセスでは国連は最高水準の資源を保有している。そしてその非国家的存在ゆえに特別な権益や歴史のしがらみにとらわれない自由な行動を起こすことができる。これから国際社会が平和を追及するときの近道が国連の強化であることは間違いがない。[B]国家との関係国連は二つの性格をあわせもっている。事務局と国際官僚は国際社会で最も優秀な「道具」であり、総会と安全保障理事会は世界各国の集合体と考えれば実に脆いとはいえ「国際社会」の意思を代弁する世界最高の「権威」となり得る。ソ連が崩壊し、アメリカが内政に重点を移して軍事予算を大幅に減らしている今、第二次世界大戦後の二極構造と超大国によるコントロ-ルの時代は完全に終わりを告げた。日本、ドイツなどが力をつけている現在、国際社会が国連の権威を背景として各国の負担をGNPなり国家予算なりを基準に課して行くというのが理想的であり、現実的であろう。国連がある国家に介入する場合、その圧力は介入を受け入れる側と介入を行う側の二つにかけられる。介入を受け入れる側への圧力とは介入その物であり、介入を行う側、つまり各国に対する圧力は経済制裁や軍隊派遣の強制を意味する。どちらの圧力も足りなければ国連の一人芝居になるし、逆に大きすぎると反発を招いて国連が成功するための必須条件である協力関係を破壊してしまう。その微妙な加減は実際の行動の管理と指揮をする事務局にかかっているが、これをしろ、あれをしろと指図するより、ある程度の「べからず」を決めた後で行動の自由を認めたほうが協力と支持を得やすいのではないかと思う。198