ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

第10回奨励賞しようとし、アイディドも国連に協力すると宣言したが無論のこと期待は裏切られ、その結果国連の介入が彼等の権益を危機にさらしていると不満を漏らした。国連とソマリア人の仲が次第に冷めていく中、パキスタン軍の兵士が殺されるという事件が起き、国連はアイディド派の犯行とみて将軍の逮捕を決定した。最大部族ハウイエ族の有力者でもある彼にはポル・ポト派と違って当然支持者も多く、彼等は国連に対する徹底抗戦を叫んで国連軍との交戦状態にある。国連の強硬な対応によってソマリア人の死者は四百人を優に超え、国連軍の犠牲者も決して少なくはない。アイディドはソマリア人の指導者より盗賊団の頭領に近い人物といわれているが、最大勢力を敵にまわしてしまって国連のPKO、ひいては和平交渉、平和の確立が成功するであろうか。あらゆる場合において国連の第一目的は平和の達成であり、正義の追求は二の次でなければならないと私は思う。犯罪者への処罰は平和回復後その国の国民が行うべきであって、一部の例外を除いて国連はできるだけ自らの役割を制限し、現地のシステムに自主性を持たせていくほうが格段と成功率が高いとカンボジアで証明されている。もはや後戻りは不可能であるけれども、ソマリアの場合、軍隊の行使は補給ラインの警備に限定し、国連は厳正な中立を守る仲介者の立場に引き下がるべきである。Ⅱ.PKO時の国連の存在意識と立場[A]非国家としての利点国連は国ではなく機関である。この事実を我々は今一度考えてみる必要があるのではないだろうか。国連は世界各国の平和への願いが凝縮した結果造られた平和を創造、維持するための機構であり、彼らの上に存在する世界政府ではない。国連は全てを世界各国の拠出金と協力に頼っているため、総会や安全保障理事会での十分な合意を欠いた行動は全て失敗している。極端な言い方をすれば国連の権力とは一部先進国の権威に比べれば砂上の楼閣のようなもので、旧ソ連のチェコ侵攻やアメリカによるパナマ侵攻が行われた時国連はその無力さを世界に露呈した。197