ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

この段階までが大前提であって、それでも他国へ侵略するなどの世界平和を侵す行為に出た時、はじめて、軍事的行動に立つという形への移行となる。この場合もあくまでも外交が主流で、軍事力は前に述べたように国際世論が形となったものという当事国への圧力団体であるという意味の軍隊であり、現実の軍事行為としては、対象国の軍事施設の破壊を最大行為とする。これ以上に軍事力を使用した場合、生じた憎悪を解消するには何年もの歳月を費やさねばならないし、その憎しみが、次の亀裂を生む危険性も多い。平和を侵害したことに対する制裁は、あくまで外交の場でなされるべきだ。クウェートを侵略したイラクに対する軍事行為は、軍事施設の破壊を目的としていたが、量的、頻度的に過度であった。いや、もっと短時間に集中して壊滅させれば、その後の被害が抑えられ、より完全にイラクに打撃を与えられた、という声が聞こえてきそうだが、前述したように、力での抑えつけは憎しみが残るばかりで、事の根本解決には行きつかない。軍事力は、全面解決は生み出さない。イラクの場合も、中東地域を中心とした国々で、実情を調査する国連検討委員会のような形を作って対話を重ねることで、もっと当事国のメンツをつぶさない形の解決に辿りつける道はあったのではないか。解決までには勿論、長い時間を要するし、どちらの方法が一般人の死者を多く生み出すとかは言えないが、根本的な解決に達せられる可能性が後者にはある。ソマリアへの派遣の場合は、大前提である地域事情の理解、認識、更に派遣に対する国際間の共通認識ということが、まず不足していたのではないか。派遣が安易に決定されているのではないかという疑問を持っている。では、警察的警護で、どこまで軍事力を使うべきか。あくまでも、防衛手段としてのみの使用に限定するべきだ。防衛手段の枠をのりこえた先には、エスカレートする方向しか残っていない。184