ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

第10回佳作うだろうとかいった脇道からの判断ではなく、平和のために世界に出ていくことの意味を真正面からといなおすことによってはじめて、世界への出て行き方が論じられることになる。それが出発点だと思うからだ。○国連平和維持活動のあるべき姿最初に国連軍が派遣された朝鮮戦争で軍事行為がかなり大規模に行われたことを除けば、スエズ、レバノン、コンゴなど、以降に発動された国連軍は戦闘行為を目的とするものではなかった。派遣される事態は様々であり、それにともなう国連軍の活動も、当然、様々ではあったが、停戦監視など、抗争の流血をくいとめるための緊急軍であることが多かった。国連平和維持活動の一つ、国連平和維持軍は、元来、武力で、闘って地域の平和を獲得しようというものではあるまい。あくまでも、平和維持軍が派遣されるという事実そのものに重要性がある。国連という場にとりあげられ、安保理事会が軍派遣を決定したという事実が、国際世論という大きな見えぬ力となって当事国にのしかかるはずだ。経済封鎖というような目に見える形になって撥ねかえってくることもある。私は、本来の平和維持軍の活動は、外交交渉による安定化を前面に出した後方で、地域警護をつとめる国際警察的な役割を担う形がいいと考えている。世界の平和を維持する大前提は、軍縮外交に象徴されるような、国家間の信頼関係をつくることである。そして世界各国が平和維持についての共通認識を持つことだ。この前提からほころびた部分が出てきた時、まず必要なのは、事態の正確な把握、事実に対して国連としての共通認識を持つこと、その結果を受けた粘り強い交渉による修復作業である。そのためにも、通常の各国間のつながりというものが重要視されるし、必要とあれば、地域ごとの状況を把握し、国家間の信頼をより深めるための地方機関といったものを作ることも有用かもしれない。183