ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

動にも常に対応できる体制を整えなければならない。昨年から今年にかけて、スーダン南部においてリーシュマニアという病気の流行が発生した。これはサンドフライというハエによって媒介される寄生虫病で、その流行は現在でも続いている。スーダン南部では長年続く内戦により交通網が分断され、かつ車での移動自体非常に危険な状況にあったので、患者達は何と数百キロも歩いて治療のために首都カルトウームへ向かった。この時その援助活動を開始したのは、どこかの政府の援助機関でも国連でもなく、フランスとオランダのNGO組織である“国境なき医師団”であった。彼等は入国許可を出さないスーダン政府に業をにやし、飛行機を使ってエチオピアより違法入国してそのまま流行地に降り立った。現場は全く悲惨な状況であり、陸路は危険なために医師団の面々は空路を使って医療救援活動を展開している。この様に戦争や政治的な理由により閉鎖された地域での病気の流行は、情報として流れにくいものであり、それでもなおかつそういった事実をつきとめ、すみやかに決断して行動に移していくこの国境なき医師団の様なNGOの存在は非常に貴重である。本来ならばこういった行動をUNICEFなりWHOが取らなければいけないのだ。違法入国をしてまで人命救助活動にあたるといった果敢さはNGOならではの事と言って済ませてしまうのではなく、国際機関としての国連が、対外関係や外交問題とは別のフィールドで救援活動を安全に展開していけるような土壌を築いていく事が第一に必要とされる。それが更なるNGO活動の充実をもたらし、国連との絆の強化にもつながっていく事だろう。4.ODAとの役割分担国際社会の実現のためには、まず生命が脅かされないような社会作り、死とは一線を画したところで生活を営んでいける状況を築くことが基本であると述べてきた。生が保証されて、初めてそこから生活が発展していくのである。生命が危険な状況では生活どころの騷ぎではなく、その状態からの解放なくして開発や援助の入り込む余地はない。それゆえ私は緊急援助の重要性を強調してきた。それは複数国にまたがる場合が多く、かつ外交上174