ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

のは国連をおいて他にはない。ii)食糧人間が生きていく上で必要欠くべからざる最たるものが食料である。国連でこの分野の中心となっているのはFAOであり、世界各地に研究機関を傭し、食料増産に向けての努力を続けている。ケニアの首都ナイロビに位置する国際獣疫研究所(ILRAD)もそのひとつである。そこではアフリカの畜産開発のボトルネックになっていると言われるトリパノゾーマ症(眠り病)と東海岸熱に焦点を絞り、その2つの病気をコントロールする事によって、アフリカにおける畜産業の発展を図ろうと研究に取り組んでいる。研究所内部は、施設、機材共に欧米の一流の研究所以上に整備されており、ほとんどの上級研究員のポストは欧米人によって占められている。ケニア人等アフリカ人は、助手や下働き要員として雇用されているに過ぎず、アフリカのための研究所でありながら、と疑問に思わざるを得ない点が多い。もちろん最先端の研究が行われているのだが、それが実際にアフリカのフィールドへ還元されているとは言い難く、あたかも欧米人研究者のための、彼等の興味本位にあやつられている機関といった印象をぬぐえない。ケニア政府の機関であるケニア・トリパノゾーマ症研究所(KETRI)は同じくトリパノゾーマ症の研究を行っている機関であるが、ILRADと対照的に深くフィールドと結びついた活動を行っている。エチオピアの国際家畜センター(ILCA)やシリアの国際乾燥地農業センター(ICARDA)もFAOの附属機関である。これらのセンターでもその上級スタッフはほとんど欧米人で占められ、欧米主導型の研究が進められている。単に最先端の研究を行っていくだけであれば、先進各国の大学や研究所でも行われており、FAOの附属機関としての研究所では、地の利を生かした地元主導型の研究を行っていくべきではないだろうか。医療援助と同様に、国連は食糧援助についてもその緊急支援にプライオリティーを置くべきである。各国の研究機関で既に十分な研究が行われている上に、多くの予算を使って更なる研究の場を欧米人に与える必要があるとは思えない。各地に散らばるこれらの研究170