ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

ページ
103/912

このページは 佐藤栄作論文集9~16 の電子ブックに掲載されている103ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play
  • Available on the Windows Store

概要

佐藤栄作論文集9~16

第9回佳作戦歴があるせいか、後遺症に陰さが少ない。日本の場合は壊滅から立ち上って行く過程に於いて、特に経済中国になった時点から、慎しみ深さを失い、隣国等は忘れて欧米を対象に、経済大国への道を一辺倒にひた走ってきた感がある。気が付いて見たら、周囲は冷たい目を向けていた。今の状態のでは、世界に対する日本の基盤は、脆弱であると言わざるを得ない。此からの日本は、世界貢献に当っても先づアジアの一員として、アジアの枠のなかで、欧米や国連と接触をはかる基本姿勢が必要である。日本の発言や行動は、アジアの代を意味するものであると言った雰囲気が醸成されれば、日本の発言の意味は重く、経済大国日本の実力も発揮し易くなる。日本は且つて、大東亜共栄圏なるものを提唱したが、その手段が武力を背景とした為、侵略の烙印を押された。今回、アジアとの共存についても、経済力に頼り過ぎると又々爪はじきされる恐があると知るべきである。アジアに於ける企業進出にしても、経済援助にしても、日本の誠意を示す事を先づ根底とする様、日本人全体が心しなければならない。扨て、私は、国連の理念や役割、そして世界の将来あるべき姿について、その理想像を描いて来た。しかし此等は、実際に衝に当っている人達から見ると絵に書いた餅であり、噴飯物に過ぎないであらう。例えば、過日来日したインドネシヤのスハルト大統領の、「常任理事国の権限や拒否権について見直すべき姿について、見直すべきである。」との提案に対し、宮沢首相は、「国連憲章の改正を必要とするので困難だ。」と、返事している。又、EC統合に対するフランス国民の投票も五十%賛成、四十九%反対であった。この事は、理性と感情が半々に交錯する人間の業みたいなものを表示している気がして誠に、興味深い。又、ソ連邦のペレストロイカも、先を急ぎ過ぎた為に内部歪を増大し、ソ連邦自体の崩壊を招いた。従って、理念は大きく掲げてもその遂行に当っては、一歩前進、半歩後退、時には二歩後退する事があっても、後続部隊がついて来ているか確かめながら、前進していく必要がある。以上、国連の理念と役割について述べた。国連の理念と役割は、冷戦時も冷戦後も変る事なく、飽く迄世界の平和共存、繁栄を目指す事にあるが、冷戦後の新らしい理念を敢えて表現すると「世界は一つ」の理想像を掲101