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概要

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人の価値観、文化、生活スタイル、経済状態などによって微妙に変化するニーズを把握し、目標を設冠することは思ったより難しい作業である。特に、互いに複雑に関連する外部環境やニーズを、総合的に把握していくことは困難が伴う。しかも、その把握や条件設定は、出来上がる物やシステムの方向を大きく規定するものであり、非常に重要な作業である。しかし、対象とするものから不確定な要素をできるだけ排除し、限定した条件を定量的にとらえ、一定の数式の上で考えていこうとする、現代の科学技術にとっては、特に馴染みにくい分野である。このような多数の不確冠な要素を考慮しながら、システム構築をしていくことに適する科学技術としては、エンジニアリング型の技術が考えられる。エンジニアリングは、これまで主として工場やプラント施設など、産業施設の建設のために発達してきた。それは、実験室や机上で組み立てられた物を、どのような方法で生産ラインにのせたら、効率良く作ることができるか,そのための施設や装置はどのようなものとすべきかを考え、その設計、建設、保全を行う技術分野であった。そして、交通、通信、供給処理施設などの発展によって、都市や地域のシステムが次第に高度化、複雑化していく中で、そのシステムを効果的に作るためにも使われるようになるなど、現在、その利用範囲が急速に拡大しつつある。しかし、施設の設計と建設を中心としてきた、これまでのエンジニアリング技術を、成熟型社会の物作りに利用するためには、まだ不備な点も多い。利用者のニーズを把握し、多くの不確定な自然環境や使用条件を整理し、システムの概念を設定するための技術や、それが作られたときの副次的な影響までも考慮できる、幅広い評価の技術が欠けている。また、広く物やサービスの循環をシステムとして捉え、その生産から回収、再利用して行くまでの、トータルな利用の系を構築していくための、ソフトの技術も必要になる。このように、ニーズの把握から評価、設計、製造、保全、さらには回収や再利用までの、全てのプロセスにわたる広義のエンジニアリングを、ここでは「トータル・エンジニアリング」と呼ぶことにする。994