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概要

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このような観点から、国連大学の新たな研究テーマと、その具体的な実施策、およびその成果の普及策と日本の貢献について、私見を述べたい。2.工業型社会を支えてきた科学技術19世紀以降、急速な発展をとげた今日の科学技術は、自然界の仕組みの一部を分析的に解明し、その中から、人類の生活の利便性や、快適性の向上に役立つものを、目的志向で限定的に再構築し、利用していくことを目指している。そして、その成果を、経済の仕組みを利用して、社会に提供していくことによって、我々の生活を便利で豊かなものに変えてきた。その基本となる考えは、自然界の原理は、人間の善悪という観念からは独立した、客観的な事象であるとの認識から出発している。そのため、科学は、政治や宗教の枠組みから独立し、純粋に自然界の原理を解明することにあり、技術はその成果を利用して、「より良い物を、早く、安く」作り出し、人々の生活の向上を図っていくことにあると考えられてきた。科学技術を利用して作り出された、物やシステムの多くは、商品やサービスという形で経済活動の中に組み込まれ、次々と世の中に送り出されていく。そして、その良否の判断は、利用者がこれに価値を見出し、対価を払って利用することによって決まる。新たなものが、社会に出現することによって発生する、多少の混乱や問題は、それが普及し発展していく過程で解決され、やがて、社会にはそれを包含Lた形での調和が形成されるという、単純で明快な進化論的発想によって成り立っている。今日の工業型社会の発展は、このような考え方にもとづく、弛みない努力と競争の中からもたらされたものである。しかし、工業生産力の向上は、私たちの生活を、物が豊富にあふれ、便利で快適なものに変えてくれたが、一方では、これまでの人類の長い歴史の中で培われてきた、きめ細かな自然との共生関係を崩壊することにもなった。元来、自然の中にごく少量にしか存在し990