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概要

satoh

7)1902-1983)。彼は意味づけのプロセスを通して得られる「自分が自分である」という感覚をアイデンティティ(自我同一性)と呼び、自己の存在の価値や意味を脅かされこの感覚が揺らぐことを、アイデンティティの危機と呼んだ。また人間は常にこのアイデンティティを確立・安定・充実させようとする自己実現傾向を持つと考えられるようになってき8)た。この意味において、人間は自分自身の存在の意味を追求し、確立しようとする生き物であるといえよう。またアイデンティティの確立の失敗や重大な危機は無力感につながり、そこでは絶望感を感じやすい。そのような場合には、自分のなすべきことを放棄して無気力になり、困難と直面するのを回避したり、うまく行かない原因を外に求めて他人を非難したり攻撃することに躍起になったり、また、外的なもの(金銭、地位)によって自己の存在価値を作り上げようとしたりするなど、アイデンティティの危機から自分を防衛しようとする。だがこのような防衛のやり方では、自分が自分であるという内的感覚を獲得することはほとんど不可能に近い。そのために一度こういった防衛のパターンにはまると、防衛のやり方を強化するか、パターンを変えるかして、絶望や無力感に襲われることから常に自分を守らねばならなくなり、自力でそこから抜け出すことはかなり困難である。そういう状況を乗りきり、アイデンティティの危機を克服していくために、我々は時には他者の力を借りながら自己表現のための努力を行なうのである。こういったアイデンティティの模索や追求は、個々人の集合体である集団においてもみられる。これは集団の成員である個人が、自分の所属する集団の価値や存在意義をも明らかにしようとするからである。ここで言う集団とは、家族や学横のような小さなものから、民族や国家のような大きいものまで幅広く指すo社会心理学の実験では、競争相手の9)存在がある集団の凝集性や作業効率を高めることが確かめられているが、これはその集団のアイデンティティが「競争相手に勝つ」ということによって保たれ、相手に負けることがアイデンティティの危機につながることから生じる現象であると考えられる。また興味10)深いのは、同じ研究において競争集団が存在する時よりも、協同を行う仲間集団が存在す970