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概要

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・報復が報復を呼ぶ。しかも国家が行う"仇討ち"は多くの人命の犠牲を伴う。この5)際限のない連鎖反応を現代の世界はどうすれば断ち切れるのだろうか0このような過去のできごとに対する報復としてのテロ、軍事行動、国際的非難等の連鎖は、国際紛争に宙いては必ずといってよいほどみられる。中東問題においてもカンボジア問題においても紛争の長期化の要因の一つに、敵対的感情や行動を正当化する「報復」というものが、当事者間の確執の根底にあるといっても過言ではないだろう。現在のユーコにおける紛争でも、第二次大戦時におけるクロアチア人によるセルビア人の虐殺等の歴史が当然影響しているだろう。ユーゴの例では、それに加えて政治体制の変革、経済情勢、諸地域の事情、隣接諸国の影響や関係などが重なり、報復の連鎖をたどることも困難な状況である。問題を整理しようと、因果関係を歴史的背景に求めて遡れば、第一次大戦勃発の引き金となった、セルビア人青年によるオーストリア皇太子夫妻の暗殺にもつながるだろうし、更に過去にその原因をたどろうとすれば、時間的にも空間的にも膨大な広がりの中をヨーロッパの始まりあるいはそれ以前まで遡るしかないかも知れない。このように、感情的対立が入り組み、因果関係が不明瞭になっていく紛争も少なくない。さて、現代の紛争につきまとう「報復」は,、本来個人の感情に由来するものである。しかし、長い歴史の中でまるで連鎖反応のように生起Lては、民族や国家間の対立的な感情や敵対的な行動を形成することになったと考えられる。国際情勢を理解しようとして報復の連鎖をたどれば、上述のように歴史における因果関係を遡ることになり、そこでは歴史が民族の意識、民族の感情を形成し、民族が個人の行動を規定しているともみることもできる。このように考えると、国際紛争とその根底にある感情的な対立は、因果関係の上では歴史的必然と言うしかないようにみえてくるOだが、果たしてそうなのだろうか。歴史が民族をつくり、民族が個人を育む流れの中で、感情的対立や報復の連鎖は必然的に現われ、それらを断ち切ることは無理なのであろ9占8