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概要

satoh

第1回佳作なろう。意識の異なるレベルを無理に単一のレベルに引き上げたりするのではなく、様々な意識のレベルにいる人々を自由に交流させる.そこで、教育者がしなくてはならないことは、ひとつの解答を提示することではなく,むしろ参加者、あるいは生徒の中に不均衡dis-equilibriumをつくり出すことであり、この不均衡を克服してゆくプロセスの中で個人の自律的な成長が可能になると考えるべきなのだ。このような考え方に基づいてすでに行われている開発教育の具休例をいくつか紹介したいと思う。フィリピンのケソンシティーにあるアテネオ・デ・マニラ大学は数年前までは、まさに開発のための教育を欧米風に行い、卒業生たちも大企業や外資系企業、あるいは官僚となってある種のエリート層を形成してゆく、そういう大学として一般によく知られていた。現在でも大学のキャンパスに一歩足を踏み入れると、周囲のスラム街との大きな違いに驚かざるを得ない。しかし、ここ数年来、若干の変化が見られるようになってきた。大学の方針として、自国の問題点、とりわけ経済的貧困の問題に学生の目を直接向けようとしだしたのである.フィリピンでは約10%ぐらいの人口忙しか相当しない上流階級の人々がたい-ん豊かな暮らしをおくり、僅かな中流階級を除く大多数の人々(総人口の約85%を占める)は極端に貧しい生活を強いられている。特にマニラのような都市、あるいはその周辺にあるスラムは、その衛生状態も悪く、とても人間としての尊厳が保障されているとは思えない状況にある。それに比して、アテネオ・デ・マニラ大学に来ている学生たちはたいてい上流階級の子弟で、そんなスラムなどは一度も見たこともないし、ましてやそこへ行こうなどとは思ってもみなかっただろう。ところが、数年前から大学は新入生のプログラムの中に、自国の現実である貧困の問題を積樋的にとりあげた、オリエンテーション的な講義を開いたのである。これは全ての新入生にとって義務として課されており、更にその間題に興味を持った学生のためには、より周到に準備された次のステップが用意されている。そして、この間題に自ら関わって、何らかの貢献をしたいと思う学生には彼らに適合する活動の境が提供されるという具合である。いわゆるボランティア活動ということで91