ブックタイトルsatoh

ページ
904/1034

このページは satoh の電子ブックに掲載されている904ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play
  • Available on the Windows Store

概要

satoh

ガルドゥング氏の平和の再定義に通じるものがある。何れにしてもこれらの主張が意図するものは、貧しい国の人々がまず最低の栄養を確保する食糧問題を解決することにより、その豊富な人口を国内生産に必要な労働力として動員して、その経済的発展を促し、さらに進んで教育・保健・住宅などの面にもおよぼし、彼らが社会的に目ぎめ、人間一人一人が自己のニーズを溝足させるうえで意思決定になるべく参加する可能性をふやすことは、国内の格差を少しでも縮小し、社会的緊張が緩和されることを狙いとするものである。だが一面、割切った見方をすると、南北格差は、今日よりも以前の方がもっとひどかったことも否めない。たとえテンポが遅くても、工業化の進歩のお陰で、援助の手がのびていることも事実である.もっともその背景には、国際世論の動向や第三世界の国連での勢力の拡大を看過できないが、先進国を中心とする経済成長によって先進国に余裕が出来た結果、これ-の接近の可能性が自覚されはじめた事実を忘れてはならない。現に、第一次石油ショックによる不況時には先進国の間に、いわゆる援助疲れと称する現象さえ表われた。さらに別の問題となるが、援助資金が被援助国の国内において有効に活用されておらず、徒ら忙浪費されているのみでなく、援助の背景にうごめく腐敗、汚職の存在が認識され、それが被援助国の自助努力の必要性の強調となったことは、単なる先進国の逃げ口上に過ぎないと言い切れないものをも感じる。そのうえ注目しておきたいことは、汚職、腐敗が単にG ・ミュルダール氏の言う軟性国家だけの問題でなく、供与国である先進国の特定の利益業界が被援助国の政府に働きかけて発生しているという、両者の関連の上に成り立っていることは、シビル・ミニマムを考えるとき、常に念頭におくべきである。これらの現実に対し、国連にも強力な監視の目を光らせる機関の設置が検討されなければならないが、むしろここでは、具体的に一歩突きこんでシビル・ミニマムを分析することが本稿の核心に迫ることと考えるので章を改めて論じてみたいO902