ブックタイトルsatoh

ページ
900/1034

このページは satoh の電子ブックに掲載されている900ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play
  • Available on the Windows Store

概要

satoh

いかをみても「国連軍を現実の国際政治上の意味ある実休ととらえ、外交政策をつくるのは、世界政府の実現を想定して外交を進めるようなものだ」(『朝日新聞』「経済地球儀」'90・11・28)という声さえもある.このように、国連を中心に世界連邦の構成をロにすることは、理念的には可能であっても、各国に主権が厳存している冷厳な現実を眺めるとき、どのような枠組みを作っても複雑で困難な問題があまりにも山積している。法至上主義ないし機能万能主義の限界がここにある。それよりもむしろ、それ以前に世界全体が、ある程度一つのまとまりのある共同社会に近づくことの方が回り道のようではあるが実現の可能性を多分に学んでいると思う。「社会のあるところに法あり」と言われるように、社会が下部構造であり法は上部構造にすぎなく、焦点は、そのような下部構造を培うための方策を問うことである。表現を変えて言えば、前述のように世界政治が依然として国家を単位とL、主権の尊重、国益の選択という現象が健在している現在、世界主義の立場からは、この国家のナショナリズムや集団主義にとらわれない、柔軟な生き方、考え方に向けるにはどのようにすれば可能かの検討こそが重要となる。ここにただ一つ楽観的な要素と言えば,ポスト冷戦下の現在、国連尊重の空気が、大国、小国を問わず世界各国のキーワードとなりつつあることである。例えば此度の湾岸危機に当り、常任理事国の間で、かつて常用されていた五大国の拒否権が一度も行使されていないという国連創設以来46年の歴史上はじめてのことである。このことは、国連の中で敵をつくりたくないという苛.拝が、核大国の米・ソをはじめ各国に共通したものと思われる。そればかりでなく、地域紛争はもとより、環境問題,科学技術の協力など地球レベルで考えねばならぬ国際間の協力がますます重要となってきたことである。この動向は、これまでの国際政治理論に対し、新現実主義批判の形で脱構築の試みが切望されていて、まさに人類文明的選択の次元に政治、社会の現実に賢明に対処しなければならないという協調-の自覚が芽生えてきたことの表われである。つまりポスト冷戦期の新しい国際政治理論、国際社会理論の構想の下で世界を動かそうとしているのである。898