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概要

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第1回優秀賞なるのであるoADは不可避的に途上国による開発戦略であり、国際機関を起源とする今までの開発戦略とは一線を画す。しかし途上国政府はADを採用するであろうか。たしかに多くの途上国政府の構成員が既存の経済構造に既得権益を持っているため、諸改革が実現しないという事態が起きている。途上国のエリート層を形成する政府構成員の既得権益を失わせる効果がADにはあることを考えると、これが採用される可能性は小さいと言えよう。ここで注目したいのは、60年代後半にTheMeaningofDevelopmentを書き、開発における新しい問題を提45)示したD.Seersの近年の論文HTheNew Meaning ofDevelopment"である。この中でSeersはエリート層から成る政府構成員が自らの既得権益を捨てる契機としてナショナリズムを取り上げている。即ち今日のイラン情勢に代表されるように、南北問題の激化による反先進国意識が途上国のナショナリズムを刺激するわけであるが、このナショナリズムが国内における先進国から移植された諸要素に向けられ、これらを否定しようとする動きが発生する可能性がある。換言すれば、高揚したナショナリズムによって既得権益が背面に退き、移植されたパッケージに対する直接的規制が可能となる状況が出現するのである.ここにADの採用と実現の展望が開かれる。またSeersは開発における文化的要素を強調するが、ADにおける文化-価値観的要素は、当然ながら各途上国ごとに特殊な形をとるナショナリズムである。ADに適した経済休制とはどのようなものであろう。高価な著惨品よりも安価な必需品に高い社会的評価を与えるADにおいて、価格を社会的必要度の尺度と見倣すわけにはいかない。当然利潤率も投資の社会的必要性の尺度ではありえない。価格と利潤率によって資源分配をする立場は否定されるのである。ADには何らかの計画概念が必要であち.一方、途上国における国営企業の低効率性を考慮すると、日本やフランスのような誘導的計画(indicativeplanning)が望ましい経済体制と言えるかもしれないoADにおいて、個別的経済主体にどのような形でインセンティブを与えるかということは難しい問題である。F.Stewartは著俸晶の一部をincentivegoodsと呼び、生産者の投資意欲を刺注45)1965年初出。 75