ブックタイトルsatoh

概要

satoh

て抱いていたロマンを､靴で踏みにじられたという口惜しさや､わびしきを味わっているばかりでなく､満月の夜に｢お月さまの世界では､兎さんがお餅を鳴いているのよ!｣と､幼児に話しかける母親の語り口からも､自信と力を奪い取る結果になったのではあるまいかO殊に､科学の粋を集め人智の限りをつくしたはずの､あの月面到着や探検に代表される宇宙探査､人工衛星､その他もろもろの宇宙技術の駕くべき進歩発達が､最終的に東に人類の幸福につながるのであれば｢足｣とするにやぶさかではないが､ともすると､と言うより､当初からそれが目的ででもあったかのように､既に｢軍事目的｣の利用-向かって大きく､然もあからさまに傾斜し始めている現実を､どう見れば良いのだろうか｡人類は今こそ､人類白身の生存と地球の保全をかけ､情報､コミュニケーションの技術の発展にどう対処して行くべきかと言う､重要な課題に取組み､その選択をあやまらぬよう､目を醒まし､自らの英知を先ず取戻すことに意をそそがなければならないと思う｡3.人間疎外の新工場過日私の知人が､最近山口県のある町で操業を開始した､最新の自動車工場を見学して帰って来ての話しの一部をど紹介しようoその工場は二千種類を超える部品を､ラインに載せて組立てているとのことで､コンピューターが組込まれた流れ作業であることは言うまでもないO何分聞かの決まった間隔で確実に流れてくる固体に､決められた時間内に担当箇所の部品を組込んで行くのだそうで､どこかで分秒の遅滞でもあれば､全体の流れに重大な影響が出るのは当然のことである｡しかもそのベルトの流れは､決まって右から左に向っての流れであると言うから､もし､ラインの中に左ききの従業員が居れば､その人は右ききの人に比べて､時間的､肉体的､精神的に大きな-ンデーを背負った中で仕事をしていることだろうと思うOまた当然の事ながら､一定の時間内は職場全員が自然の生理現象をも抑制されなければならない訳である｡幼児期の子供の左ききを気忙した親が､無理にその左ききを矯正しようとする488