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概要

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は、19世紀に入ってからの週日学校といった初等教育施設が充実してきたことが、最も大きな原因と思われる。この教育とリテラシーの密接な関係については、スコットランドの著しく高いリテラシー率を考察することにより明らかにされよう。スコットランドの高いリテラシー率は、直接的には、教育の成果にほかならない。たとえば、1818年、スコットランドでは、942の教区学校-54,161人、2,222校の個人学校-3)1,106,627人の生徒がいた。スコットランドにおける人口比でみるならこの数は、かなり高い。比較的貧しいスコットランドで、このように教育システムが、普及したのは、バイブルを読んで学ぶカルヴィニズムの伝統でありその表われとしてのスクーリングや個人的4)学習の強調であった。スコットランドにおいて読めないことは、かなり不名誉なことであ5)り「低い身分のものさえ少なくとも堅実な初等教育だけは与えられていた」のである。このようにリテラシー発展と教育の普及は表裏をなすもので相互に重要な役割をはたしている。アジア地域における今世紀末の推定43.5%という文盲率は、イギリスにおける1750年代に相当するものであり、約2世紀強の遅れとなってくる。半数弱が読み書きできないという事態は、人間の基本的権利としてのリテラシーという観点から、最も不幸な状態であるといえよう。現状の諸条件が改善されない限り、アジアにおける高い割合の文盲をなくしリテラシーの近代型の到来を期待するのは困難である020年、30年後の成人のリテラシーを高める為には、10代の未成年者のリテラシーが未来にわたる成人リテラシーの大きな指標であることを踏まえた上で、現在の就学の対象となるべく児童を初等教育に100%参加させるのを最重点とするのが急務である。先進国におけるリテラシーの発達と、開発途上国のそれは、歴史的・風土的・文化的に必ずしも同一ではない。一つにリテラシー率の母胎たる人口増加のパターンが異なる点であろう。近世の西欧の人口率推移は、いわゆるS字型曲線として表わされる。リテラシーが広く浸透するのは、出生率の減少とともに医療の発達等に伴う死亡率の低下も始まり、都市化、人口数が一定化してくるいわゆる「初期的人口減退期」にあたる。先のイギリス4占注3)浜林正夫「イギリス民衆教育論」明治図書1970p.231注4)カルヴィニズムの制度が、より完全に浸透していたスコットランドにおいては、その理念に従って既に、1696年に議会が制定した法律-学校設置法-が制定され、完全な教区学校制度が他に先んじて確立されていたのである.往5)Ashton,T.ら.TheIndustrialRevolution1760-1830中川敬一郎訳「産業革命」岩波文岸1973p.29