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概要

satoh

うことがアメリカの通信社によって、今迄よく暴露されている。事実、少し古いことであるが、`ァメリカの偵察機U-2がソ連領内で撃墜されたのは、まさにそのスパイ行為のゆえだったのである。しかしそれを怒ったソビエトも、もちろんスパイ行為を怠らない。先頃、富永元陸将補がソ連武官に情報を売ったかどで逮捕されたのは、まだわれわれの記憶に新しいところである。そしてソ連当局は、事実解明どころか、その武官を早々に帰国させているのである。こういった一連の問題に対して、われわれは普通、それが国際間のしのぎ合いというものだ、と当然のこととして受取る.しかしそういうわれわれの「常識」とは、もう矛盾を矛盾とも思わない、麻痔したものになっているのではないか。そもそも道理に従うことを当然とすれば、どんな問題でも解決する筈である。国連大学は真理を追求する大学であるゆえに、科学の立場に立って、「国際問題が科学の方法をとらなくなる不合理さ・理由・経過等」を追究して貨いたい。もしそれによって、今までのやり方の非が誰にでも分かるように摘出されれば、改めるべき点も浮び上って来よう。そして科学的に進めることが当然である、というのが風潮になって、難病が克服されたのと同じく、国際紛争は解消されるであろう。ところで私は、この問題を追究するとき、「文化」の問題が可成り大きな位置を占めるのではないか、と思う。というのは科学とそれ以外の問題を扱うときの方法が余りにも違うのは、欧米人固有の問題で、その影響をいま、世界が受けているのではないか.という気がするからだ。ヨーロッパで最初に科学の発見に到ったとき、如何ばかりの精神の強さが作用していたことだろうか。現在でも彼等の熱意は、われわれを驚嘆させる。亡くなられた朝永振一郎氏は「外国の物理学者は、食事をしているときでも、酒を飲んでいるときでも、すぐ物理のディスカッションを始め、紙と鉛筆を出して式を書き、まるで何か悪かれた人という感じで、こちらはとてもついて行けない」と言われたことがあったという。またイリノイ大学教授で朝日賞を受賞された竹内外史氏も、アメリカ数学者の凄まじいガンパリに、「この国に骨を埋めるのは生半可な覚悟では出来ないのだぞと思っている」と言われる。朝永250