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概要

satoh

第3回佳作の意味を説明しながら繰り返した。憲法学者の答えは次のようだった0「法のあるべき姿と現実とは、また話が違います。占領されて憲法が隷属されることがあるかもしれません。ポツダム宣言のときがそうでしたね。しかしそのときでも,占領軍命令を超える法はあるでしょう。自由とか基本的人権とかに関してです。ま、あまり御答えにはなっていませんが- 」ポツダム勅令が成立した法的根拠は、旧憲法の「天皇-公共ノ安全ヲ保持シ又ノ、其ノ災厄ヲ避クル為緊急ノ必要二由り(中略)勅令ヲ発ス」という条文にある。しかし新憲法下では戒厳令も出せないし、まして憲法を停止する命令も出せないから、この憲法学者の答はいまの時代に通用するものではない。とはいえ、私はそのとき、もう重ねて質問しなかった。礼を失するように思ったし、憲法学者が私の問うたような場合を想定して考を展開したことがある、とは思えなかったからである。同じころ、私はある会合で、同席した国立大学の憲法の教授に、もし外国軍隊が侵入してきても、侵入軍はまず出入国管理令違反の犯罪人と規定されるべきではないか、と尋ねてみた。私が手短にしか喋らなかったせいか、彼は私のこの質問に直接には答えず、別な方面に話をもっていった。そこでこのときも、私は再び自分の意見を説明しながら、質問を繰返したのだが、それに対する彼の言葉はこうだった。「そうですね。貴方のいうことは理屈としては成り立ちます。しかし軍隊に旅券は要らないんですからね。レ1や、今までそういうことは考えてみませんでした。ま、これから考えてみます」しかし、多分彼は私の考に全く興味がないのであろう。私はいまだにそれ以降の返事を貰っていない。私は少し筋違いだとは思ったが、人権問題が専門で、著書も何冊かある弁護士に、事のついでに、例の出入国管理令云々を話してみたことがあった。このときの反応は前の専門家の反応とは少し違っていた。彼は、大声で、「やあ、これは盲点だ」241