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概要

satoh

評価・検討も、充分理論的に展開されるべきである。ただ単純に、貿易量が増加し経済交流が盛んになっただけでは、有効な安全保障が叶えるとは限らない。しかし、どういった商品をどう貿易し、さらにその他の経済交流をどう実施していけば、安全保障に役立つかが充分研究されれば、非軍事的な安全保障論も現実性を高めることができよう。何も軍備だけが安全保障を行う訳ではない。国連をはじめとして、今日の世界の諸活動は国民国家体制を前操とし、政府中心,国家単位重視を特色としている。また、軍事力は、国家の土台を支える権力組織として、絶対的な意味を持っている。しかし、真に軍縮・平和を求め、安全保障の土台を築いてゆくためには、これらの現状の枠組みに拘泥せず、問題の解決を図ることも必要なのである。以上、五点の具体的研究課題を列挙してきたが、これらは必ずしも等しい重さで並列されているのではない。しかも、Ⅰで基本的方針として述べた〔3〕〔4]を考慮すると、私の個人的期待としては、第三世界を対象とした研究に力が入れられることを望みたい。あとがき黒輝明の映画に「生きものの記鼻」という作品がある。主人公の小金持ちの老人は、核兵器に対する恐怖心にとらわれ、一家を挙げて「放射能から安全な」ブラジルへ移住しようとするが、家族から狂人扱いされ、やがて悲劇が続き本当の狂人となってしまう。1955年のこの映画の中でも「地球上のどこにも安全な場所などない」といった意味のセリフがあるが、1982年の今日では、これは一層の真理となっている。核戦争のみならず通常戦争からの安全地域すら、人類には残されていないようだ。精神病棟の一室に入れられた老人は「この星なら安全だ」と初めて(痴呆性の)笑顔告見せる。老人は病室の金網越しに「地球」-太陽を見上げ「燃えている・--だからあんなに言ったのに-・-」と狼狽する。しかし、私達には「この星」は存在しない。私達は発狂234