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概要

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第3回優秀賞しないものの、国民は貧しく、軍人の制服だけが街路に目立つ。そんな国々は第三世界に溢れているO〔2〕軍部の政治関与についての研究世界には軍政を敷く国は多いし、民政とはいえ軍部の発言力の大きい国は枚挙に暇がない。全ての軍政なり軍部勢力が、軍拡を積極的に推進しているとは眠らないとしても、軍部の力が強いことは、一般に軍縮には好ましくない環境ということになるO特に第三世界●では、国民国家体制の不成熟(必ずしも「未成熟」ではない)に由来する政情の不安定さを克服するために、軍部は切札として登場するのである。本来の建前としては、軍部や軍人個人が政治に関与することは好ましいことではない。にもかかわらず、第三世界で次々と軍事クーデターがおこり、軍事政権が誕生するのは、そこに共通して構造的に存在する何らかの原因があるに違いない。軍の組織が国家機構の中でどのような位置を占めるのか。軍の意向や軍人の発言はどうLr,う過程でどの程度政府や世論を動かすのか。軍部や軍人の政治介入はどのように進展してゆくのか。戒厳令・クーデター・軍政のメカニズムと国家経済・国民生活に与える影響はどうなるのか。こうした問題を、多くのケース・スタディーを積んで解明してゆくことができれば、現に軍部の力が強まりつつある国に対して、前車の轍を踏まないよう注意を喚起することも可能となろう。既にケース・スタディーとして秀れたものもあろうかと思う(例えば、大江志乃夫)0そうした研究の蓄積から、軍部の政治介入の一般理論を目指し、また徐々に軍国化-と傾斜しつつある国-適宜警告を発することができれば、国連大学の第三世界の平和に貢献するところは大となろう。なお、比較研究に際しては、国民国家制の浸透した欧米などの歴史的経験もさることながら、国民国家制が安定していない第三世界の同時代的経験の検討が重要であることは言うまでもない。231