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概要

satoh

必ずしも常に正しい訳ではない。二つの小さな国が、各々超大国の意を休して対決する、というより、二つの小国間の争いに際して、一方がある超大国と取り引きを始めた場合、対抗上、もう一方も別の超大国と結ぶ、といった、ある極のいい加減さのようなものが、「南」の戦争には感じられる.しかし、はっきりしているのは、独裁的支配者の気まぐれや欲望によって、国家の名の下に国民が虐げられ、「北」や「東」が儲けている、ということである。「南」諸国の軍事的支出は多くの場合、支配層の都合と、「北」の売り込みとによって、国力にふさわしい以上のものになっている。従来、軍縮や安全保障についての研究は、欧米や極東などで国民国家体制が成熟した上で結成されたNATOやワルシャワ条約機構、日米(韓・台)安保体制などについての議論や、題大国間の核軍縮SALTやSTARTの問題に大きな関心が集まっていた。非軍事的な安全保障を語る時でさえ、国民国家体制の充実が暗黙の前提となっていることがあるようである。そしてまた、今日「北」「東」「南」を問わず、兵器の更新・高級化を中心とした軍拡と、核兵器行使の危険の高まりとは、重大な問題として顕在化してきた。いきおい、最近(特にSSDⅡ前)は、核軍縮についての研究が多く発表されたことに象徴されるように、超大国に関わる研究が大勢を占めているようである。しかし、本章で繰り返し述べてきたように過去20年間の軍事的衝突の大半が第三世界で集中して起きていること、そして第三世界における軍事関係の諸問題についての今日的研究が豊富とは言えない現状を考えると、第三世界を対象とする研究がもっと奨励されるべきように思われる。第三世界の戦争は「限定故争」であるかもしれない。しかし、それは人の生命が吹き飛ばされる戦争であり、非戦闘員が餓死してゆく戦争であり、決して看過されるべきものではない。全世界の終末咋結びつく核の問題も確かに重要ではあるが、実際に武力が行使され、「南」の国力が虚しく疲弊してゆく第三世界の問題は、世界平和を考える視点からも、南北問題を考える視点からも、極めて重要なものであるに違いない。そして、この第三世界の戦争の問題は、国連大学が軍縮・安全保障問題を取り上げてゆく228