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概要

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さて、危機の性質は複合的であるとともに緊急を要するものであることが、引用したいくつかの見解からもうかがわれる。これに対しての経済学側の対応を検討してみると、パラダイム(多くの人びとに広く受けいれられ、教科書的体系にまで定式化されている思想のワク組み)論争が盛んに行なわれた。ボランニーに代表される経済人類学ともいうべき分野が開拓され、熱力学から援用したエントロピー概念による理論構築が試みられている。また、クラインのマクロ・モデルをはじめとして、各国政府、研究機関は国際的な計量経済モデルの拡充をはかってきている。が、少なくとも現在までのところ経済学の再生に成功しているとは思われない。実証性に欠ける抽象的な論議が多い上に,どこまでも対象を経済活動に限定しようとするためかえって説得力を欠く結果となっている。繰り返しているように、地球的規模での統合化に既存の組織が有効に対応できないのが、危機の一因と思われる。この危機を克服する過程および克服後、すなわち統合化された地球においても経済学は、依然として重要であろう。確かに経済学は法則性の欠如、実験の困難など、自然科学と比較して多くの欠点をもっている。しかし、人間が社会的存在である以上、価値システムの考慮なしに生活を営むことは困難であり、それには社会科学としての経済学が必要であると思われる。そして、その要求にこたえるために経済学が果たすべき転換は、かなり大きなものとなるであろう。 WOMPでは、未来志向、世界志向、価値志向の三点を活動の特質としてあげている。価値判断に関する過去の長い論争は、再び価値を前面に置くことにためらいを感じさせるかもしれないが、飢えた数億の人びとを前にしてその理論的な解決が困難なことを理由に眼をそむける者がいるとすれば、その者はすでに社会科学者たる資格を自ら放棄しているというべきである。WOMPの「いかなる社会的・政治的認識行為も、自覚すると否とにかかわらず、事実上一定の価値選択と離れては18)ありえない」という見解が完全に正しいかどうかはともかく、現在の危機に対する緊急行動が要請されている時、すべての価値判断を拒否することは事実上困難である。また、未来志向、世界志向についても現在これらの要素を全く抜きにして有意義な活動をすることは困難であろう。社会科学-ひいては社会科学の女王を自認する経済学-が、今する180注18)坂本義和、前掲苦、vi