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概要

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3)民にとって、一方は失敗、他方は成功としてはね返ってくる」.正に、世界銀行の行なった経済開発戦略はこの言葉通りである。例えば、1968年に世界銀行の行なったインダス川のタルベラ・ダム建設事業は、イタリア、フランス、西ドイツ、スイスの企業によって、数十億ドルを投じて行なわれた。しかし、その事業はうまくいかず、更に、6000万ドルの追加融資を行なった。この時、パキスタン政府はそれ以上の出資を強いられた。しかし、建設工事が姑まってから7年経ても、農民のところには1滴の水も届かなかったということである。このような経済開発戦略が決して、悪いものだとは思わない。確かに、その目的は直視しているものであろう。しかし、失敗は失敗なのである。これに対して、次のような事例を考えて性しい.1975年12月中旬から行なったバングラデシュにおける、手押ポンプの普及である。この事業は、数人の勇気ある海外青年協力隊員の提案によって始められたものである。この事業の内容は、手押ポンプ購入の補助金を出すこと、また、そのポンプの使い方を説明することが主なものであったようであるoこの一見、開発に対し、どれだけ貢献できるのか不安になるような内容だが、その結果は成功であった。手押ポンプが普及された地域は、今日では、多くの農作物を産出できるようになり、農民にも笑顔が戻ってきた。この事業は成功した例である。しかし、一般的に、このような、その地域の個々人に与える事業というのは、事業を決定する様々な会議を通りづらいもののようである。このバングラデシュの手押ポンプ普及の事業も、資金の面で問題となり、なかなか決定会議を通らなかったようである。通常、援助・協力する側は、後に何か残るような事業、成功した場合の結果が明白に現われるものを優先する傾向がある。ダム建設のような濯概事業などがそうである。このような優先順位をつける方法は悪いとは思わないが、しかし、結果が成功か否かという判断は、周りの人間の目に見えるかどうかということではなく、その対象となった地域の人々の顔に笑顔を作ることができるかどうかということではないであろうか.この判断を客観的に見る為には、第一章で述べたような「幸福度」というものを計118注3)SusanGeoTrge,How theOtherHalfDies.London,1977(小南祐一郎・谷口真理子訳『なぜ世界の半分が飢えるのか』朝日新聞社、264頁)注4)同上264・265頁