ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

脅威としての自然災害と人間の安全保障「調整役」の役割を越えて第28回佳作澤田寛人要約本稿は、この自然災害という人類すべてが直面する脅威に、普遍的な組織である国連がいかに対応し、その体制を整えるべきかを問うものである。この問いに答えるため、以下の作業が求められる。第一に、「自然災害」を、そもそもどのような枠組みをもって捉えるべきかを検討しなければならない。ここでは、国連が提起する「人間の安全保障(HumanSecurity)」の概念を適用する。第二に、国連の自然災害への取り組みを概観し、その特徴と問題点を指摘する。第三に、前の二節の議論から、国連に求められる役割を導出する。その際、安全保障論における脅威のスペクトラムから示唆を得る。また安全保障分野の研究から、自然災害を「非対称的」な脅威と見なすことにより、以下のような示唆を得た。1.?自然災害のような抑止できない脅威に対しては、被害局限のための能力を高めなければならない。とりわけ副次的な被害を引き起こすことが多い自然災害については、災害発生直後における対応がきわめて重要なのである。2.?「一連の」脅威には、文字通り「シームレスな」取り組みが強く求められる。それぞれの脅威(特に大規模な自然災害は、復興に長い時間を要する)の局面において、適切な措置を長期的にとらなければならない。3.?非対称的な脅威は予兆を感知することが困難であるため、平時における「予防」措置がとりわけ重要であることがわかる。これはすなわち、社会の防御機能を高める(=強い社会をつくる)ことが求められていると言えるのである。973