ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

第28回佳作and Rescue)という表現を用いる。)等の要因があった。さらに、スイス国際救助チームのリーダーであったエルンスト・ボッサル氏の証言19を要約すると、1度々出された津波警報と大量の降雪のため、搜索担当地域において搜索チームと災害搜索犬の安全が確保できなかったこと、2津波の被災地であったため生存者救出の可能性が少なかったことが、要因として列挙されている。被支援国は、国際緊急救助チームの支援を受け入れる、あるいは、要請する場合、津波、地震等の災害の種類から判断して搜索活動に適した場所、搜索手段を鑑みて有効な支援を受けられるよう調整しなければならない。とりわけ、日本は、諸外国に対して誤解を与えないよう、国際標準に則った搜索の概念や用語を用いて、迅速かつ十分な調整を行う努力が必要になろう。ⅲ災害搜索犬受入れの事例スイスの国際捜索救助チームと災害搜索犬を受け入れたものの、捜索活動が種々の理由で捗らなかった理由として、ボッサル氏の証言20によると、「一つは警報が度々出たこと。現場に到着したとたん津波警報が出た日もあった。また、この数日間は、大量の降雪で廃墟に入るには犬にも人にも危険な状態になった。活動地は津波の被災地だったので生存者はいないと思う」等を挙げた。また、わずか3日間の捜索活動で帰国せざるを得なかった理由としてボッサル氏の証言によると、「安全性を考慮した結果、作業を続けられる状態ではなく、また生存者発見の可能性が非常に小さいのであれば、犬や犬の訓練士に怪我をさせてしまっては、あるいは、チームの誰かが怪我をしてしまっては、元も子もない。そうなっては、現地の人にとっても私たちにとっても何も助けにもならない」、という。その他の災害搜索犬を伴った国際緊急援助隊9チームは、平均3日間の捜索活動を行い、生存者救出等の成果を得られずに帰国した。これは、生存者救出の76時間から96時間というゴールデン・アワーの原則に準じたものであり、余震、津波警報、原子力災害、積雪等の安全を確保できない状況を鑑みると、諸外国の判断は妥当なものであった、と言えよう。他方、約10日間におよぶ長期活動を行った韓国チームと災害搜索犬の献身的かつ19<swissinfo.ch>2012年2月7日にアクセス。20<swissinfo.ch>2012年2月7日にアクセス。967