ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

第28回佳作二か国の捜索救助については、スイスの災害搜索犬チームの手法は、日本側にとって初めてのものであり、相互に手法を十分に理解するには、かなり手間が必要であった。スイスの災害搜索犬は、木造密集市街地の捜索は初めてであり、また、周辺で多数の捜索・救助の人員が活動し、人間臭が立ち込めており、上空でマスコミ取材のヘリコプターの爆音が聞こえるといった状況では、その能力を発揮できず、遺体2体を発見したのみであった。他方、フランスは、地震発生後既に4日経過した1月21日正午に日本に到着したが、被災地では生存者が期待できる鉄筋コンクリートの建物倒壊現場はなく、大多数の木造密集市街地の倒壊現場では、一通りの捜索は終了していたため、地元側が難航していた地滑り現場で犬の嗅覚で遺体を捜索するよう要請したが、フランスは、生存率の低い現場での捜索活動に消極的であり、遺体2体を発見して捜索活動を終了した。結局、両国の国際捜索救助チームは、阪神・淡路大震災においてその能力を十分に発揮できなかった。ⅳ災害搜索犬受入れ時の課題西川智氏の事例13から課題を導き出すと、1被災自治体は国際搜索救助チームの支援を想定していなかったため、災害搜索犬の受入れ体制ができていなかったこと、2被災自治体と国土庁、消防庁、農水省との間に災害搜索犬の受入れに対する意見が異なっていたこと、3マスコミの圧力により災害搜索犬の有効性を確認しないまま受け入れたこと、4災害搜索犬を生存者救出ではなく、遺体捜索に運用した結果、諸外国の国際搜索救助チームの士気が下がり、災害搜索犬も能力を発揮できなかったこと等が挙げられる。欧米と日本の災害の種類や建造物の被害の相違、災害搜索犬を訓練する方法の相違があったため、国際搜索救助チーム及び災害搜索犬はその能力を発揮することができなかった、と言える。(2)東日本大震災14?国際搜索救助チーム受入れの事例東日本大震災では、世界各国から20個チームからなる救助隊員890名、災害搜索犬37頭(内訳:オーストラリア2頭、ドイツ3頭、韓国2頭、メキシコ6頭、シンガポール5頭、13西川「国際救助活動のミスマッチ」265?266頁。14 MOFA: Schedule of Operations of Rescue Teams from Foreign Countries, Regions and International Organizations(As of April 3 2011)<swissinfo.ch>2012年2月7日にアクセス。965