ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

ページ
964/1096

このページは 佐藤栄作 受賞論文集 の電子ブックに掲載されている964ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

佐藤栄作 受賞論文集

というのが現状である。欧米諸国で訓練された災害搜索犬が、災害の種類、建築様式のほか、衣食住・通訳等の自己完結性の欠如等の様々な要因によって、日本でその捜索能力を十分に発揮できるとは限らない。日本の災害搜索犬も遺体捜索に徹することが多く、被災現場で嗅覚を失い、本来の役割を果たすことができないこともある。災害搜索犬の運用と有効性について矛盾が生じているにもかかわらず、日本は、欧米諸国から災害搜索犬の支援を受け続ける一方、遺体捜索のための代替手段を模索しようとしなかったのであろうか。(3)有効性日本と欧米諸国は、災害搜索犬の本来の能力を活用するため「生存者捜索のために運用する」といことを前提条件としているが、阪神・淡路大震災や東日本大震災の事例に見られるように被災者の生存の見込みが薄い場合、災害搜索犬が、遺体捜索に運用されることも頻繁に生じる。ただし、災害搜索犬の有効性という観点から鑑みると、災害搜索犬を含む犬は、人間の約1,000倍の鋭敏な嗅覚を有しているため、火災や死臭等の様々な臭いが立ち込めた被災現場から生存者や遺体を捜索する任務に適していない。それは、阪神・淡路大震災時に「いろいろな臭いが立ち込めている都市の地震災害では、犬が非常にセンシティブになって、ほとんど機能しなかった」(阪神・淡路大震災記念人と防災未来センター・センター長河田恵昭氏)という証言からも明らかであり、場合によっては、「遺体の臭いをたくさん嗅ぐと、その臭いが強すぎるために嗅覚が弱くなり、災害搜索犬として働くことができなくなる3」(災害搜索犬調教師村田忍女史)、という。9623吉田典史『震災死生き証人たちの真実の告白』ダイヤモンド社2012年2月2日、156頁。