ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

第28回佳作大規模災害において国際連合は真に必要な支援を提供できるのか?―阪神・淡路大震災と東日本大震災を事例とした国際搜索救助チームと災害搜索犬の有効性に関する観点から―佐藤智美要約大規模災害に見舞われた被災国に対する初動対応の一貫として、国際社会は、人命救助を最優先し、国際搜索救助チームと災害搜索犬の支援を申し出ることが、一般的である。ただし、国際連合(国連)は、被災国と国際社会との「調整」機能を有するが、被災国政府の意向や客観的な情報に基づき、援助を行う国・機関に助言するものの、指示する権限はない1。それは、阪神・淡路大震災(1995年)と東日本大震災(2011年)における国際捜索救助チームと災害搜索犬の支援活動、国連、国際社会、被災国である日本との受入れ体制において顕著に見られた。実際、阪神・淡路大震災において日本政府は、世界各国から災害搜索犬25頭と職員60名からなる国際緊急捜索チームと8団体の支援を受けたが、「政府非常災害対策本部に外務省は入っておらず、支援受入の窓口・判断体制も不明であった2。」また、東日本大震災において日本政府は、世界各国から災害搜索犬37頭と職員890名からなる20個国際緊急捜索チームの支援を受け入れた。しかし、防災大国であり、かつ、国際緊急支援国として多くの実績を有している反面、被災国として支援を受ける経験が少ない日本は、国際基準に則って国連や国際搜索救助チームの支援を受け入れることができたのであろうか。また、国際搜索救助チームは、真に必要な支援を行うことができたのであろうか。このような問題意識に基づいて、本稿は、以下の三点を明らかにする。第一に、東日本1河原節子「わが国の国際緊急援助とグローバルな課題」『国際問題』第608号、2012年1、2月合併号、55頁。2読売新聞社大阪本社『阪神・淡路大震災』読売新聞社1995年、104~105頁。959