ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

すが、北朝鮮・イランにも火種を残しております。国家主権と軍縮との相克は、国連活動と国際NGO活動に大きな課題をつきつけております。第27回奨励賞2国連における中国の影響力冷戦終結にともなって、中国は旧ソ連との同調が弱まったことで、国連に対する代表としての地位を確固たるものにしました。これまで台湾が主権国家として、平和維持活動に参加する問題を討論する際だけ、議案の通過を阻止する発言をしてきました。戦後、日本の敗戦により、台湾が日本から独立しても、中国は台湾を属国として、手中に納めたいという気持ちがあって、主権を認めておりませんでした。中国の軍備拡張は、国連の平和維持活動に危機感を抱かせました。また一方、驚くほどの経済成長とあいまって、国際貿易(WTO)への加盟、地域連帯組織、例えば、安全保障問題を提唱する上海合作組織の結成、医療チームと平和維持部隊の派遣など、積極的に国際組織に参加しはじめております。そういう活動は、経済的利益にもとづく、巧みな外交手段で行われております。中国共産党一党政権を維持する中国は、安全保障理事国の否決権を駆使して、人権に違反する国でも、友好関係を結んで、庇護したといわれます。最近では、イランの立場を守り、安全保障理事会のイラン制裁をする議決案に反対して、可決できなかったという経緯がありました。また中国は国連人権委員会の改革提案を支持しないで、十年以上もの時間を費やし、問題の改革提案に対抗してきました。常任理事国にゆるされた否決権の行使については、現在は資本主義国と社会主義国の対立軸から離れて、加盟国の意見の差異を極力無くすべく、主権国家の言い分を、分かち合う義務を包含すべきだと考えられます。3「人間の安全保障」という概念冷戦終結後、従来の安全保障という概念を広く採るようになり、さらに「恐怖からの自由」を指すことが多くなり、「欠乏からの自由」を指すことが少なくなったといわれます。(UNDP「国連開発計画」人間開発報告書・一九九四年)。それは、人間の戦争の恐怖が、921