ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

紛争解決における国際NGOの重層的活動第27回優秀賞相良祥之要約冷戦の終結以降、紛争の様態は国家間戦争の危機から、内戦の勃発へと重心が移った。現代の紛争解決において、伝統的な政府の職業外交官や政治家、国連、地域機構などによるトラック1外交では限界があるため、国際NGOの重層的な活躍が顕著になってきている。それでは、紛争解決のためにNGOが果たせる役割とは何だろうか。本稿では、NGOの活動をトラック1.5、トラック2、トラック3という三層構造に腑分けして考える。NGOはその活動範囲によって多種多様であるが、これらが重層的に活動することで、はじめて紛争解決が導かれると考えられる。まず、トラック1.5とは、政策決定者に対する非公式介入を指す。非公式な主体が、公式な政府ないし政治指導者などの政策決定者を対象に、平和裏に紛争を解決させるための介入が行われる。そこで典型的に取られるのが和平調停であり、非公式な調停者が紛争解決もしくは特定の課題の調停に乗り出す。具体的なNGOとしてはカーターセンターやアハティサーリのCMIなどが挙げられる。次に、トラック2とは、非政府だが影響力のあるエリート層に対する非公式な介入のことを指す。ここでの対象は政策決定の責任者では無いものの、政策決定過程において影響力を持つエリート層である。彼らに対して、当事者間の相互交流、紛争解決のためのアイデア策定のためにNGOが仲介する活動が行われる。ここで用いられる手法としては、協議などの対話に加え、ワークショップを通したトレーニングなどが含まれる。国際NGOがたずさわる協議は、和平調停ほどはっきりと紛争当事者の意思決定を行うことを目的と875