ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

ページ
872/1096

このページは 佐藤栄作 受賞論文集 の電子ブックに掲載されている872ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

佐藤栄作 受賞論文集

性を強める傾向にいち早く反応し、これらを問題群として捉えて領域横断的な統合を推進してきたのがNGOの活動であったとも理解することができる。さらに最近では、3つの問題群が構成するインターフェース(共通領域)を立体的にとらえ、事態に対応する総合戦略を練る動きも存在する23)。専門化が進む中で、平和と開発の均整のとれた政策的バランスをとることを唱道し、自らもその活動を推進してきたのがNGOや市民社会の動きである。ところで、経済(カネ)、社会(ヒト)、環境・資源(モノ)は、経済的に見れば要素賦与であるが、政治学からみれば人権に関連する。従って、平和的生存権、政治的・市民的権利、社会的権利、環境的権利といった「権利ベースのアプローチ」から捉えることが重要である。だからこそ、国連人口基金(UNFPA)が活躍した国連人口開発会議(ICPD)でリプロダクティブ・ヘルス概念が女性の人権として確立された過程において、人間開発・社会開発と人権問題をNGOが結びつけた役割は大きいのである。6-2公共空間におけるリーダーシップとパートナーシップNGOの活動は、異なる政策領域をつなげることによって狭まる政策空間を広げようとしてきただけでなく、存在論的にも認識論的にも公共空間を広げることによって、より公正な世界を求めてきた。存在論としては、自由主義的価値である個に注目するか、共同体主義的価値である全体に注目するかという軸がある。公共空間の認識としては、現実主義的価値である官(公)か自由主義的価値である民(私)かという軸がある。世界市民社会論は、世界という共同体を先行的存在とみなし、その中での世界政府や世界市民を想定した。国際市民社会論は、公的部門としての国家と市民社会を同置した市民社会論の国際化として捉えられる。これに対して脱国家市民社会論は、民間部門としての市場社会や市民社会を包括する。さらに、情報コミュニケーション(ICT)技術の発展と広がりとともに、公的部門でも私的部門でも様々な主体がサイバー空間で多様な情報や知識や価値観を交信している。仮想市民社会論は、個人が個別のコンピュータからアクセスできる「ワンクリッ87023)ここでは、功刀の図式(Tatsuro Kunugi,“Challenges posed by globalization and synergistic responses,”in AlexandreKiss, et al., eds., Economic globalization and compliance with international environmental agreements, (Kluwer LawInternational, 2003), p.15)に従った。