ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

第26回佳作論、マスメディアも大きくとりあげることになるであろうし、オバマ大統領によるプラハ演説以来のインパクトを全世界の人々に与えることが可能であろう。さらには、核兵器を使用した実績のある国である米国のオバマ大統領が広島もしくは長崎を訪問することによって「核兵器なき世界」の実現に向けた諸国間の協力関係が促進されることも期待できる。オバマ大統領の「核兵器なき世界」演説から時間が経過してはその意義を失いかねない。「鉄は熱いうちに打て」――誘致に向けては日本の外交力が問われることは言うまでもない。5劣化ウラン弾問題――もうひとつの核兵器をめぐって――核廃絶の問題を語るときに見落とされがちなのが、劣化ウラン弾の問題である。核廃絶と聞くと、多くの人は広島及び長崎に投下された原子爆弾を想起するかもしれない。しかし、劣化ウラン弾もまた現実的には湾岸戦争やコソボ紛争、そしてイラク戦争に至るまでの武力紛争下において使用されてきた小さな核兵器なのである。では、この問題について国連ができることは何であろうか。劣化ウラン弾の使用を行っている国が米国である以上、オバマ政権に対して劣化ウラン弾使用の禁止と廃絶に向けた働き掛けを行うと同時に、その非人道性ならびに違法性について明確な結論を出すべきである。対人地雷やクラスター爆弾のように、国際社会を巻き込んでの禁止条約の成立を期待することができるかもしれないが、劣化ウラン弾の場合、禁止条約を作成したところで米国がその締約国になるとはおよそ考えられない。ただ、ひとつの可能性を提言するならば、国際司法裁判所の勧告的意見を要請することである。劣化ウラン弾の違法性について、権威ある組織である裁判所に宣言してもらうことで、徐々に劣化ウラン弾使用を行いにくくし、廃絶へとつなげていくのである。劣化ウラン弾の国際法上の違法性については、同兵器を禁止する実定国際法は存在しないものの、武力紛争報や国際人道法における慣習国際法などを考慮すれば、その違法性は845