ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

に採択するとともに、機を見て「核兵器なき世界」に向けての宣言を出すことが考えられるであろう。宣言であれば、法的拘束力もないため、核保有国の積極的な反対もみられないのではないだろうか。その前例としては、1961年11月24日の国連総会決議1653が存在する。同決議は、原爆ないし核兵器使用の合法性について、国連憲章の精神、文言および目的に反し、その使用が戦争の枠を越え、無差別的苦痛及び人類と文明全体の破壊をもたらすと宣言している。(ただし、ここで気をつけなければならないのは、国際法の漸進的発達という観点から考えた場合、こうした宣言などの集積が幾ばくかの法的効果を持つに至る場合がある。例えば、慣習国際法成立の要件として存在している諸国家の法的信念として理解されうる、という点である。)その他にもひとつのアイデアが考えられる。例えば、上述のような宣言を採択する際に、特別総会もしくは安全保障理事会の特別会合を広島もしくは長崎で開催すべき選択肢があるのではないか。前者、すなわち特別総会については、総会規則3「総会は、前会期における決定により、又は国際連合加盟国の過半数の要請により他の場所に召集される場合を除くほか、国際連合本部において会合を行う」に従い、後者については安全保障理事会仮手続規則5「安全保障理事会の会合は、通常、国際連合の所在地で開催する。理事会の理事国又は事務総長は、理事会が他の場所で会合を行うことを提案することができる。理事会がこの提案を受諾したときは、その場所及びそこで理事会を開催する期間を決定しなければならない」を根拠として開催可能である22。開催の候補地として挙げることができるのは、唯一の被爆国である日本の広島もしくは長崎である。ニューヨークの国連本部ではなく、爆心地において行われる議論、そして発せられるメッセージだからこそ、「核兵器なき世界」に向けての大きな一歩を踏み出すことが可能となるはずである。また、出席者についても、各国の国連大使のみならず、各国首脳の参加を要請することが肝要である。広島もしくは長崎で会合がもたれることにより、例えば広島で会合が開催される場合には各国首脳が平和記念資料館を訪問し、核兵器がいかに非人道的兵器であり、使用されてはならない兵器であるのかを目の当たりにすることになるといった効果も考えられる。無84422 総会は、国連憲章第11条において、軍縮に関わる役割を規定されている。例えば第1項は、「総会は、国際の平和及び安全の維持についての協力に関する一般原則を、軍備縮小及び軍備規制を律する原則も含めて、審議し、並びにこの様な原則について加盟国若しくは安全保障理事会又はこの両者に対して勧告をすることができる。」と規定する。