ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

「核兵器なき世界」へ向けた国連の役割と可能性第26回佳作末吉洋文要約オバマ大統領のプラハ演説など、「核兵器なき世界」へ向けて大きく動き出した国際社会ではあるが、依然として大きな課題が残されている。とりわけNPT体制の強化やCTBTの発効などが2つの大きな課題である。相互確証破壊理論に基づいた冷戦時代も終焉し、「新しい戦争」としてのテロリズムとの闘いが開始された現代の国際社会において、国連の役割は依然として大きいと言わなければならない。その中で、本論文は、いくつかの提案を行う、まずは、市民社会との連携である。平和市長会議や日豪政府が主導して発足した国際賢人会議「核不拡散・核軍縮に関する国際委員会」が存在するが、こうした市民社会との連携をより密に行うべきである。また、平和的生存権からのアプローチを国連の人権機関が行うことも重要であろう。その権利性については議論の余地が残されているが、核兵器の惨禍から逃れる権利、とも読み替えることが可能であり、人間の安全保障(human security)を含む人権の観点から平和的生存権を考察した上で、「核兵器なき世界」の実現は、すべての人々の平和的生存権を保障すること、そして同時に国連の目的である「国際の平和および安全の維持」に大きく寄与することを証明しなければならない。次に、1996年ICJ勧告的意見の再考である。とりわけ、自衛権の行使として核兵器の使用が許容される可能性が残された点が気になるが、NPT第6条に規定された核軍縮義務の憲章を行うべく、再度、勧告的意見の要請が検討されてしかるべきであると考えられる。831