ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

第26回優秀賞である。OSCE加盟国間で国防政策を調整し、できるだけ核に依存しない地域的な集団安全保障体制が整備できれば、その地域における核の役割を低減することが可能になる。このOSCEで「平和の制度化」が実現するには、これまでのように「相互の威嚇による安全保障」から「相互に協調していく安全保障」へのパラダイムの転換が必要となる。世界のグローバル化が進み「人、金、もの」の自由化が進み共通の利害が膨らめば意見の食い違いを武力で解決するよりは平和的解決を行うことがメリットは大きい。域内で民主化と経済発展が進めば、戦闘行為で多くのものを喪失する人々が増加し、平和的解決を求める動きは強まっていく。こうした「平和の制度化」を展開できれば、OSCEは地域安全保障のモデルになりえるが、現実的にみて欧州の未来モデルになれるかどうかは、NATOがロシアと今後どのように関係を構築して信頼を醸成するかにかかっている。ロシアを核廃絶に向けた軌道に乗せていけるかどうかは、核時代の将来を規定するうえで重要な重みを持っている。一方、アジア・太平洋地域でも、OSCEのような地域安全保障の枠組みを検討していくことが必要である。なぜなら、この地域がその枠組みを欠いているからではなく、OSCEに加盟していない核保有国の中国を地域安全保障の枠組みに囲っていくことが不可欠であるからである。アジア・太平洋地域である極東地域は、日本、中国、ロシアそして米国が関係してくる複雑な地域である。しかも、経済成長が軌道に乗り出した中国や東南アジア諸国が軍備拡大を進めており地域安全保障の枠組みは、まだ先がみえていない。しかし、米国政府を中心に地域安全保障の枠組みづくりは開始されている。NATOのような軍事機構がいきなり誕生することはないが、既存の日米安保条約、米韓相互防衛条約などを手掛かりに、多国間での対話機構を設置することであろう。また、さらにアジア太平洋経済協力会議(APEC)とともに信頼醸成と利害の共有化を進めることが必要である。さらに、アフリカ、中東、中南米、南アジアでは、国連の平和維持機能を前提に地域紛争の防止・処理を図り核保有の誘惑を排除し、潜在的核保有国をなくしていく道を模索していくべきである。そこで、参考になるのが「トラテロルコ条約」である。過去に核開発789