ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

第26回優秀賞核廃絶をめぐる三つの段階的アプローチと国連の役割及び課題澤田公徳はじめに人類に深刻な危機をもたらした冷戦が終結し、米国とロシアの核戦争の危機は遠のいたが、この地球上には未だ過剰な殺戮に十分な核兵器が貯蔵され、国際平和の確かな道標はみえてこない。冷戦後、米国とロシアの間で急速に核軍縮の動きが始まり、中距離核戦力(INF)全廃条約や第一次戦略兵器削減条約の締結、さらに戦術核兵器の米ロ本国への撤退など1980年代末から核兵器削減が本格化した。しかし、その後核兵器削減のペースは遅くなり1990年代には完全に停滞してしまった。一方、核拡散の動きは、低下するどころか核兵器保有国が増加する奇妙な動きが生じている。たとえば、湾岸戦争後のイラクの核開発、北朝鮮の核開発疑惑、そしてインドとパキスタンの核実験による「核保有国」宣言など潜在的な核保有国の増加は高まる一方である。それでは、冷戦が終結したというのに、この好機が生かされず核廃絶の展望が開かれないのはなぜか。その要因を解明し、「核依存」の体質から脱却し核廃絶に向けた方向に流れを転換していくことが我々にとって喫緊の課題ではなかろうか。そこで本稿では、核解体の時代に入っても核兵器の保有能力を政治的・軍事的に利用しようとする「核依存」体質の背景について探り、どのようにすれば核廃絶という「目標」に「現実」を近づけていけるか、具体的なアプローチの方策を検討するとともに、核廃絶に向けて国連が果たすべき役割と課題についても併せて提示していきたい。Ⅰ.「核依存」の体質から脱却できない事情とは何か冷戦が終結して「核本位体制」の根底になっていた核を正当化する論拠はなくなり、世781