ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

第26回優秀賞核廃絶をめぐる三つの段階的アプローチと国連の役割及び課題澤田公徳要約冷戦の終結とともに米ロの核削減プロセスが開始され、1990年代に世界は「核解体」の時代を迎えた。「核解体」の時代に入っても核兵器とその保有能力を軍事的、政治的に利用する「核依存」の体質は依然として殲滅していない。世界が脱冷戦と本格的な軍縮時代に入ることができたにもかかわらず、その好機が生かされず、核兵器廃絶への展望が開かれないのはなぜか。そして何が阻害要因となっているのか。そこで本稿では、「核依存」体質の背景を探りながら、核廃絶という「目標」にどのようにすれば「現実」を近づけていけるか、核廃絶を射程内に入れながら核の持つ「効用」を低減しそれをゼロに近づけていくための三つの段階的なアプローチによる方策を検討した。具体的には、1核の意義と役割を低減する方策、2地域安全保障構築による平和の制度化、3核の国際管理体制の構築である。第一のアプローチは、核兵器の削減(核の軽武装化)と核軍縮に向けた安全保障環境を整備することで核兵器の役割を限定化する方策である。しかし、このアプローチでは、一定限度以上に核保有量を減らすことはできない。核軍縮を核廃絶に向けて進めるには、世界で起こる戦争や武力対立を解決し、国際緊張を緩和し将来に向けて紛争を予防していくことだ。そこで、第二のアプローチとして戦争や紛争が起きても核に依存しない地域安全保障体制を模索していくことが不可欠となる。地域安全保障の枠組みが整備されて核が限りなくゼロに近づく段階になれば、核保有国の目的は潜在的核保有国への対抗となり相互に利害が共有化され、第三のアプローチとして核の国際管理体制が可能となる。しかし、国際管理を行ったとしても核の危険性は低減でき779