ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

そうであれば、異なる種類の単位であっても、手段さえ間違わなければ可能性はあるのではないか。その理論的支えとして、補完性原理やインターリンケージを取り上げた。これは欧州共同体という比較的文化的な背景に共通性の高い地域の上で成り立ったものであり、アフリカにおける共同体の中で、補完性原理を機能させるためには如何に中立的な仕組み作り出すかに拠っている。この「中立的なかたちでの補完性原理」を支え、地域共同体、国家、広域圏、地球規模の「つながり」における調整機能、または各レベルを取り持つ「文化の翻訳者」の機能を期待できる機関は、やはり国連なのではないかと思われる。地域共同体などを含めた多元的な価値を尊重し、中立的な視点から社会文化にかかわる情報を収集分析し、各機関に対して、各地の社会構造や法慣習を考慮した「地域文化に関する専門的助言」を提供し、地域で実施されるプロジェクトの基準コードを作成するような専門機関、あるいは部署が設けられないものだろうか。人類は「ハードウェア(地球)」を共有し、社会参加のインターフェースとして「オペレーション・システム(OS)」を使用していると考えてみよう。参加者の中には、バージョンの古いソフトウェア(SW)を使用する者、互換性の確認できないSWを利用する者、またはそもそも利用するためのアクセス権を持たない者が存在している。デ・ファクト・スタンダード(事実上優勢)を持つSWが主流となる市場では、利用頻度の多寡や他のSWや周辺機器との適合性、ブランド力などが決定要因となる。しかし、各SWは得意とする領域が異なっており、単純にその性能に優劣をつけることはできないことも忘れてはならない。課題は、多元的なSWのローカルでの価値も認め、その優れた特徴を残しながら、社会という共有システムへの接続を促すことではないだろうか。こうした、多元的なSWとシステムの互換性を確保し、また「全てのグループから中立である知識はありえない(久保田1999:21-22)」という間主観性の存在を念頭に、既存のシステムの中立性を監視する役割として専門機関への期待が大きい。「依存」も「従属」も英語ではDependencyと書くことができるii。しかし、両者は大690ii従属は、Subordinationとも示される。