ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

および共同管理の対象である資源そのもの」と定義できる(井上、2004:11)。一般的に地域共同体の伝統に根ざした生活に直接関係する枠組みはローカル・コモンズと呼ばれる。伝統的な共有地や資源の利用は地域住民に依っているが、一方で政府が主体として資源管理にあたることを直轄管理と呼ぶ。直轄管理では、中央政府により理論合理性を基に計画が策定され、予算が確保され、人員雇用、人材育成、専門家によるコンサルティングという手続きが必要となる。プロジェクトとして予算が付けば、地域住民が直轄管理の請負労働者として活動を行うことが見込まれるが、予算の枯渇やプロジェクトの終了をもってこれらの活動も終了してしまうことになる。この場合一度は村落に発足した活動グループも自然消滅的な運命を辿ることになる。外部からの資金や技術の導入を常に必要とする他律的なメカニズムでは長期的に安定した管理を実現するのは難しく(原後2003)」、血縁・地縁のつながりで出来ている地域共同体においては中央政府が中心になるよりも、地域共同体の持続的な生活の中に仕事を組み込むことが合理的な部分も多い。地域共同体には伝統的に継続されてきた行事や作業がある。地域における慣習のリアリティーが強いために、地域によっては地域共同体の住民はその義務をこなすためにフルタイムの仕事に就労することを望まない傾向さえ見ることができる。こうして様々な状況を比較考量した結果、無理に就労しないという「合理的」な選択をする者もいる。(2)地域共同体と上位枠組みの連携インターリンケージ・イニシアティブ(inter-linkage initiative)は国連大学による「環境と持続可能な開発(ESD)」プログラムの一環であり、持続可能な開発の管理を目的とする革新的なアプローチとされる。インターリンケージは、環境保全における地域共同体の取組を、さらに上位の大きな枠組みで補完することで国際約束の実施を促進することを目的とするモデルで、例えばピースト、ベラスケス(ピースト、ペラスケス、2003)の報告がある。この報告によれば、地域に密着して存在する生態系はリンケージを複数有し682