ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

第25回優秀賞法は、地球の子午線の赤道から極までの長さの1千万分を1メートルとしたもので、人間の生活臭を感じにくい単位である。しかし、メートル法のように統一された度量衡は、科学や制度にとっては大変便利である。しかし、単位化する対象が、生活者である人間心理や行動などである場合、単位というのは現実と記号の間に不協和音を奏でることになるのではないだろうか。西洋でも「個人」の出現は12世紀頃とされており、伝統的な共同体の生活から、都市への移動に伴い新しい生活スタイルへの変化が求められたことがきっかけであるとされる。西洋史学者の阿部謹也氏によれば、「個人」という人間の単位が日本に紹介されたのは、1884年(明治17年)頃であり、この「個人」も、自然環境に対する態度や所有観を持つ西欧的な単位とは解釈のズレがあったと考えられる(阿部2001)。伝統的な共同体の生活から、近代化を進める考え方も否定はしないが、持続してきた生活を無闇に壊してしまうことも得策ではない。伝統的な地域共同体では、生活を単位とした決まり事を重視する慣習を残していることが多く見られる。このことを前提とするならば、地域共同体の価値観を活用しならが、「生活の単位」と「制度の単位」をバランスよく取り入れ、アフリカとして、より大きな枠組みとのネットワーク化を密にすることで、相互補完的な仕組みを設けるほうが、アフリカ社会の開発にとって合理的ではないだろうか。(2)補完性の原理と地域共同体グローバリゼーションを迎え、「世界システム(田中1989)」のもと、人間が国際社会と無関係に生活することはもはや難しいようである。社会は「自らに生命を与えることを強いられると同時に、世界の活性化に貢献を求められ(Lechner 1990)」、また「ゲマインシャフトからゲゼルシャフトへの移行という強迫観念(Wallerstein 1991)」という力学が作用し、すべての社会が世界システムに繋がることの必然性に示唆を与える。しかし、生活世界の単位である地域共同体に、都市で育まれた価値観(例えば合理的経済人:Homo Oeconomicus)を無防備に受け入れさせること自体に直感的な抵抗を感じるのも事実である。地域共同体が世界との「つながり」を不可避とするならば、その課題は、地679