ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

アフリカの生活世界をつくる地域共同体のちから―多元的価値の共存と国連に対する期待―第25回優秀賞はじめに廣瀬淳一2008年に横浜でTICADⅣが開催されるなど、アフリカの貧困問題に対する世界の注目が集まっている。アフリカ経済の低成長については、自然・地理条件、人口構造、政策、政治体制、植民地支配の経験、紛争・暴力の多発など、様々なレベルで論じられている(平野2002)。福西は、「初期要因」として熱帯性気候、乾燥・半乾燥気候帯にあることなどに起因する旱魃などの厳しい自然条件や、平均寿命の低さ、一次産品輸出に依存する国家の為替レートの上昇、豊富な天然資源の賦存によるレントの奪い合いなどの、製造業の国際競争力の低下、著しい民族の多様性などを挙げ、教育、行政、金融に関する制度など、政府によって操作可能な要因を「政策要因」として改善が望まれる要因と指摘する(福西2002)。サブサハラ・アフリカ(以下アフリカ)では、約6億4000万人が48の国家に分かれて生活しており、その総生産は合わせて約3327億米ドル(1999年)である。人口規模や経済規模を考慮すれば、国家の数が著しく多い点がアフリカの特徴ともいえる。平野は、アフリカ研究が各国研究に偏っている現状を指摘し、アフリカは多様であり一括りにして語ることはできないという批判を覚悟のうえで、アフリカ48カ国を、アフリカ地域経済という大枠に収容して、一定の構造を備えたものとして把握する可能性を模索している(平野2002)。平野が述べるように、アフリカの48カ国はただ同じ大陸に位置しているだけでなく、相互に無関係ではない、という意見も頷ける。しかし、困ったことに、人口密度の低さや、アフリカの民族の多様性に起因するものと考えられる「社会の分断i」によi社会的分断とは、属性が比較的同質のグループが複数存在し、かつグループ間の属性が著しく異なる状態を意味している。グループのアイデンティティーとして、エスニシティや所得水準、宗教、言語、身体的特徴が取り上げられることが多い(福西2002)。677