ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

第24回佳作て立ち遅れた生活基盤の整備(医療、保健衛生、住宅、教育)を事後対処療法的に行う一方、開発途上国では経済開発の成果が上がらないため、経済開発の社会的障害を取り除くための社会開発35を行うが、富の配分システムや様々な経済的インフラ・制度の未整備などが原因で経済発展が出来ない。1970年代になると、公害問題などを通して経済成長一辺倒の推進方法への批判が出てきた。72年の国際人間環境会議では先進国が環境保全を主張したのに対し、途上国は貧困撲滅を主張し、ストックホルム人間環境宣言では環境保護と経済成長が併記されるという結果になった。しかしながら1980年代の後半には途上国も貧困が環境劣化を引き起こすことを認識し始め、貧困と環境問題を個別に扱わなくなる。人間の置かれた社会環境を視野に入れた幅広い視点からの貧困解決のための開発を検討して人間不在の開発にしないことを主張し、公平性の概念から貧困問題を考えるようになる。その結果、外から観察された地域住民のニーズではなく、開発に地域住民が参加36することで集落のニーズを直接把握する手法が開発されるとともに、自立・自助を目指す地域参加型の開発プロジェクトがNGOを中心に手がけられ、成果をあげる。1990年代は冷戦の終結により、東西問題から南北問題に外交の基軸が転換する。途上国支援において社会開発の重要性が再認識され、トップダウンからボトムアップでの開発、開発に関するステークホルダー(市民、先住民、NGO、地方自治体、国家、国際機関)の多様化、住民参加(計画、実施、評価の各段階への住民評価)が行われるようになる。95年にはコペンハーゲンで世界社会開発サミットが開催され、コペンハーゲン宣言および行動計画37が採択された。96年は「貧困撲滅のための国際年38」とされ、1997~2007年の10年の主たる目標は絶対的貧困を撲滅し、世界全体で貧困全般を削減することにあるとされ、環境、食糧安全保障、人口、移住、住居、教育、清潔な水、衛生、農村開発、生産的雇用、および不利な立場にある人々や弱い立場にある人々のニーズに重点を置いた戦略が立てられた。また、2002年のヨハネスブルクサミット(持続可能な開発に関する世界首脳会議)では環境問題やアフリカの貧困問題が扱われた。35森林保全の分野では普及システム、技術研修、土地のゾーニングが国際機関によって実施される36PRA(Participatory Rural Appraisal参加型農村調査)などがその代表例である。外部からやってくる専門家ではなく地域住民が主体。37「各国が設定する目標期限までに絶対的貧困を根絶すること」という項目がある38テーマは「貧困の撲滅は人類に課せられた倫理的、社会的、経済的義務である」627