ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

第24回佳作策担当者や活動家、投資者や研究者たちのネットワーク作りに取り組んでいる。林道の建設や農業のための森林破壊による悪影響を最小限に抑え、違法伐採を止めることはこの活動の一部である。もちろん上述した5例以外にも熱帯林保全に取り組んでいるアクターは数多く存在する。これだけ多くのアクターが行動を起こしているのにも拘らず、この問題に改善の傾向が見受けられないのはなぜだろうか。次章以降でその点に関する考察を行う。24第3章国際的法的枠組みの必要性3-1.地球サミットでの議論1992年にブラジルのリオデジャネイロで開催された国連環境開発会議(UNCED-地球サミット)では、1972年に発表されたローマ・クラブによる報告「成長の限界」や同年にスウェーデンのストックホルムで開催された「国連人間環境会議」で採択された「国連人間環境宣言(ストックホルム宣言)」を契機に国際的な認識が高まった天然資源の枯渇や公害・廃棄物・自然環境の破壊等の地球的規模での問題に人類がどう立ち向かっていくべきかが論議された。同会議では、地球環境を保全しつつ社会経済の持続的な発展を図っていくという「持続可能な開発(Sustainable Development)」の考え方に基づき、「リオ宣言」が取りまとめられるとともに、21世紀に向けての行動計画である「アジェンダ21 25」が採択された。さらに、同会議の機会を利用して生物多様性条約及び気候変動枠組条約の署名が行なわれたほか、砂漠化対処条約を採択するための措置を国連総会に求めることがアジェンダ21に明記された26。地球サミットにおける森林問題に関する議論は、特に先進国における市民(消費者)の環境問題への意識の高まりを背景に、欧米諸国を中心とする先進国が生物多様性条約や気候変動枠組条約と同様に森林に関しても法的拘束力を有する国際的法的枠組み(いわゆる「森林条約」)の策定および「持続可能な森林管理」を主張した一方、熱帯林保有国などの24論文「世界の森林動向と持続可能な森林経営の推進に向けた国際的な議論の概要」より25その第11章で「すべてのタイプの森林の経営、保全及び持続可能な開発のための科学的に信頼できる基準及び指標を策定すること」と記されている。基準とは持続可能な森林管理の概念を規定したもので、指標はそれを測定する尺度、定量的・定性的に森林の特性あるいは状態を判定するための要素である。26砂漠化対処条約は、1994年に採択されている。623