ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

もに、大気を浄化したり、騒音や風、霧などを防ぐフィルターの機能も有するなど、地域住民の暮らしに密接した様々な機能を有している。4災害:熱帯林は土壌保全、山崩れ(及び土砂流出)防止、水源涵養など様々な環境調節機能を有しているが、生態的には極めて脆弱である。熱帯林には確立された造林技術がほとんどないとともに、栄養分の多くは木そのものに貯えられており、木が消失すると保護を失った土地からは、薄い表土が熱帯地方特有のスコールによって流されてしまい、たちまち不毛の地となってしまうことが多い。また、当然のように熱帯林が減少すれば環境調節機能も停止する。このように、熱帯林や生物多様性の減少は、市場を経ることなく多数の人々に被害が及ぶという点で外部不経済であるといえる。そして、熱帯林減少や生物多様性の喪失に伴う被害は事後的に回復することは非常に困難なため、予防原則に則して事前に保全することが望まれる。第2章各アクターによる取り組み132-1.国際機関1 FAO(Food and Agriculture Organization 14、国連食糧農業機関)FAOは農民の生活水準の向上や栄養状態の改善、農業生産の向上などについて国際協力を実現することを目的として1945年に設立された。FAOにおける森林問題とは、次世代の需要に応えるために資源を確実に保障するよう経済、社会及び環境の状況を向上させるために森林やその他の資源をいかに活用していくかという点において、最も重要かつ複雑な問題であると位置づけられている。森林問題におけるFAOの使命は「世界の森林の持続可能な経営において、加盟国への支援を通じて人々の幸福を保障すること」であり、主な目標である、a)持続可能な土地利用や食料の保障、さらに国家や地域および地球的レベルにおける経済、社会開発や文化的価値への貢献、b)森林システムやその遺伝資源の保全や森林の持続可能な経営及び有効利用、c)信頼できる確かでタイムリーな森林関連情報の提供、に基づいて森林プログラム15、熱帯林行動計画16、フィールドプロジェクト、統計情報・技術改良と普及などの活動を行っている。62013財団法人地球・人間環境フォーラムHPより※国家および国連による取り組みは第3章以降を参照14 FAO: http://www.fao.org15林業政策と計画、森林資源、林産品の3つの技術部門に分かれている。(FAOForestryProgramme)16 各国が行う熱帯林の保全、造成及び適正な利用のための行動計画作りへの支援事業であり、熱帯林地域の各国において国別の計画が策定されている。土地利用における林業、林産業の開発、燃料とエネルギー、熱帯林生態系の保全、制度・機関の分野について国際的な行動指針