ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

3第1章熱帯林減少の要因と影響1-1.世界の現状世界の森林面積は38.7億ha(天然林:36.8億ha、人工林:1.9億ha)で、全陸地面積の約30%を占めている。世界中で1990年から2000年までの10年間、年平均で日本の国土面積の約4分の1に当たる939万haの森林が減少した。地域別には、ヨーロッパ地域で増加しているのに対し、アジア4、アフリカ5 6、南米地域等では減少している。この間の森林面積の増減を熱帯地域とそれ以外に分けてみると、熱帯地域における天然林の減少が著しく、毎年1420万haずつ失われているとされており、これは本州の3分の2の面積に相当する。また、1億ha以上の森林を有する国家は8カ国7あり、そのうちブラジル、コンゴ民主共和国、インドネシアの3カ国で世界の森林減少の約50%を占めていると言われているが、それらの地域は全て熱帯林である。1-2.熱帯林減少の要因世界的な森林減少の原因8は様々だが、それらの背景には開発途上国における急激な人口増加や貧困などの社会・経済的な問題が存在する。1燃料用木材の過剰な採取:多くの開発途上国では、薪や炭などの木材を燃料としている。世界で使われている木材の約50%が燃料用の木材であり、20億人以上が利用していると言われている。2森林以外への用途の転用:森林を伐採し、放牧地、農地への転用、移住、入植を行なうなど、いずれも急激な人口増加が要因となっている。3非伝統的な焼畑農業の増加:焼畑農業とは、森林を焼き払い、灰を肥料にして2~3年間耕作し、土地が痩せてくると別の場所に移動して森林を焼き払うというものである。伝統的な方法では、1度、焼畑農業を行った場所は20~30年放置するため、森林を十分に回復させることが出来た。ところが近年では人口の増加に伴い、森林が回復しないうちに再び焼き払うという非伝統的な焼畑農業が行われるようになっている。4森林火災:焼畑農業や農地開発のための火入れなどを発端として大規模な森林火災が起きている。5不適切な商業伐採および違法伐採:商業伐採とは自家消費のためではなく、あくまで“販売”を目的とした伐採を意味し、そのほとんどが先6183 FAO「Global Forest Resources Assessment 2000」「State of the World's Forests 2001」より4減少の49%は焼畑によるものだが、植民地時代が短かったため減少のペースは緩やかに。5減少の70%が焼畑によるものであり、植民地時代が長いことによる社会システムの欠如が原因。6減少の31%が放牧地の開発によるものであり、数多くいる移民が政策の中枢にいないことが原因。7ロシア、ブラジル、カナダ、アメリカ、中国、オーストラリア、コンゴ民主共和国、インドネシア8環境省「世界の森林とその保全」より