ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

第24回優秀賞にある双方の協力をえることが可能になる12。モントリオール議定書における途上国に対する代替フロン開発に関する技術・財政支援体制や成層圏オゾン層破壊物質の生産を当面認められている途上国の参加を促すために、条約加盟国と非加盟国間の同物質貿易の禁止を行っていることはポスト京都議定書を考えるには参考になる。もっとも、気候変動枠組条約の方が、オゾン層破壊防止条約よりも複雑かつ合意形成に困難が伴う。しかしながら、両者は規模の差こそあれ、実際の困難さは変わりないとする意見がある13。モントリオール議定書で扱う、成層圏オゾン層の破壊は確たる科学的証拠もなく、また地表に到達する有害な紫外線の増加がオゾン層破壊に拠るものか科学的証拠がないまま国際的な議定書交渉が行われた。そのため、ヨーロッパ共同体・ソ連・わが国はCFCs 14をウィーン条約に規制を盛り込む事に根強く反対した。その第一の理由は科学的不確実性と代替フロン開発が進まないことにあった。しかしながら、モントリオール議定書が妥結した後、南極大陸のオゾンホールの拡大が明らかになり、地上への有害な紫外線による被害が確認されると急速に規制が強化された。確かに、地球温暖化と温室効果ガスとの因果関係は完全には証明されていなく、IPCCらによって指摘されているに過ぎず、太陽の黒点活動の影響、宇宙広範の活動の影響、地球内部の活動、磁気圏の活動などが影響していると因果関係を否定する報告書が出されていることも事実である15。しかしながら、地球温暖化が仮に温室効果ガスによって引き起こされていることが証明されるまで、対策を躊躇することは大きなリスクを伴う。地球温暖化は気温や水温を変化させ、海水面上昇、降水量(あるいは降雪量)の変化やそのパターン変化を引き起こすと考えられている。また、洪水や旱魃、酷暑や台風などの激しい異常気象を増加・増強させる可能性があり、生物種の大規模な絶滅を引き起こす可能性も指摘されている。大局的には地球温暖化は地球全体の気候や生態系に大きく影響すると予測されており、真水資源の枯渇、農業・漁業などへの影響を通じた食料問題の深刻化、生物相の変化による影響など12 stag=1、rabbit=0という具合に、戦略を数字で定義した場合、利得は2つの数字の最小値に依存する。すなわち、利得はと記述することができる。13前掲「地球ガバナンスの現状と展望」95頁。14フロン類は炭素、水素、塩素、フッ素などからなる化合物群であるため、このように略する。15“Cosmic Rays, Carbon Dioxide, and Climate”STEFAN RAHMSTORF, DAVID ARCHER, DENTON S.EBEL,OTTO EUGSTER, JEAN JOUZEL, DOUGLAS MARAUN, GAVIN A.SCHMIDT, JEFF SEVERINGHAUS,ANDREW J.WEAVER and JIM ZACHOS, pp. 38-41. Eos, Vol. 85, No. 4, 27 January 2004.609