ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

第24回優秀賞経済発展との両立を図りながら削減議定書に参加を促す方法は色々と学術界でも考えられているが、筆者がもっとも有効だと考える方法は、まず途上国の1人当たりGDPと1人当たり排出量を組み合わせた指数が一定値に達するまでは、途上国は何の制約も負わないが一定値に達すると、GDPあたりの効率改善の義務を負う。次に、1人当たりGDPが世界平均に達した段階で、1人当たり排出量の絶対値削減の義務を負うという二段階に分けた規制である。これは客観的な基準を決めて途上国の義務を段階的に強めようというものである。この手法を執ると中国を含む東アジアの国々は2013年から効率改善の義務を負い、2015年から2025年にかけて1人当たり排出量削減の義務を負う。こうしたプロセスを経て最終的に650CO2e ppm 4の安定化を目標とした場合には5、先進国では1990年比36~59%の削減、BAU 6比49~66%の削減が必要となる。また、100年後の1人あたり排出量均等化の下での650CO2e ppm安定化の場合は、14~38%の削減が必要とされている。途上国については段階的に義務を負うようにする。さらに、途上国の1人あたり排出量または1人あたりGDPが2000年当時の先進国の水準のそれぞれ50%に達した時点で途上国も排出量削減をしないと550ppm達成は困難との結果が出ている7。途上国の参加を含め、国際的な合意を得るには多大な困難を伴う可能性があるが、途上国の参加が遅くなるほど先進国の削減割合が大きくなる。550ppm安定化に向けた100年後の世界全体の排出量の枠が決まっている以上、途上国参加が遅れれば遅れるだけ先進国の削減量が増え、その逆もまた真であるというtrade-offの関係がある。こうしたジレンマを解決するには革新的な技術の開発はもとより、先述したように、気候変動問題に対処するには国民の理解と努力が不可欠であることは言うまでもない。普遍的義務としての議定書の確立へ向けてポスト京都議定書を国際法のアプローチから考えた時、その議定書を普遍的義務として確立することを目標にすべきである。国際義務は相互的義務と普遍的義務に分類できる4equivalentの略でCO2換算という意味。5 Den Elsen他によるMulti Stage Approachによると2050年に先進国と途上国の1人あたり排出量の均等化を目指すことを前提とし、550CO2e ppmおよび650CO2e ppmの安定化を目標とする。550CO2e ppmを実現するには、2050年時点において、先進国では1990年比67~80%の削減、BAU比でも70~85%の削減が必要となり、仮に先進国がこのような削減に成功し、さらに途上国が段階的に参加してくることによって、世界全体では550CO2eppmの安定化が可能になる。6 Business as usualの略で、普通に活動した場合という意味。7(財)地球環境産業技術研究機構(RITE)ホームページhttp://www.rite.or.jp/607