ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

第24回優秀賞地球環境を改善する国際枠組みと国連の役割―人間のさが愚かな性を乗り越えて髙木功介はじめに地球環境問題は、地球温暖化、オゾン層破壊、酸性雨、地球規模での砂漠化現象のように、発生源や被害地が必ずしも一定地域に限定できないものを指し、多岐に及ぶ。そのため、本論では地球温暖化問題に焦点をあてて、2013年以降の気候変動枠組条約(ポスト京都議定書)制定に向けた国連の役割について考えたい。気候変動枠組条約の目的は言うまでも無く、地球の温暖化防止のために温室効果ガスの規制を行うためにある。地球温暖化は19世紀において既にその可能性が指摘されていたが、国際社会で大きく取り上げられたのは85年にオーストラリアで開催された「気候変動に関する科学的知見の整理のための国際会議」(フィラハ会議)がきっかけであった。これは、国連環境機関・国際学者連合・世界気象機関が主催したもので、二酸化炭素のみならず温室効果ガスによって、気候変動とりわけ温暖化を引き起こすとの合意が成立し、人為的な気候変動問題が政治的課題として取り上げられたのであった。国連環境計画(UNEP)のトルバ事務局長は会議主催団体に対して国際条約締結に向けて取り組むように命じて米国の参加も呼びかけた。しかし、米国では科学者主導の手法に批判があり、政府主導による気候変動の科学的評価をする政府間メカニズムを創設することを提案され、「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)が創設された。この機関はUNEPと世界気象機関(WMO)が主催で88年に開設され130ヵ国以上からの450名超の代表執筆者・800名超の執筆協力者による寄稿、および2500名以上の専門家による査読を経て作成されている。88年12月には国連総会において、気候変動が人類共通の関心事であることを確認し、全世界的な枠組で取り組みを求める決議が採択され、89年にも、早急に気候変動問題に603