ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

第24回優秀賞第Ⅳ章結論――シナリオAに向けて動き出した歯車以上、6つのシナリオを基に、京都議定書とポスト京都議定書、そして国連の役割を検証したが、すべてをまとめると以下のようになる。1実効性のある枠組みとは、すべての国が参加し、有効な数値目標を主要排出国に課している枠組み(シナリオA)であり、2現在の枠組みである京都議定書は実効性があるとは言い難い。3また、現在交渉中のポスト京都議定書も各国の主張の違いから、実効性ある枠組みの形成が危ぶまれている。4各国の主張の違いはひとえに、地球温暖化問題への懸念材料の違いから生じており、妥協点の見出しが困難となっている。5そこで、国連による「各国が同じレベルで交渉を進めるための基盤づくり」が必要となる。6国連の活動により、各国の懸念は軽減し交渉をスムーズに進めるための「基盤」が出来上がる。現在、温暖化をめぐる各国の歯車は、噛み合わず、別々の方向に動き、そして鈍い軋みの音を上げている。このまま進めば、「シナリオA」のような国際枠組みは形成されず、京都議定書の時のようにまた歯車がひとつ欠ける状況に陥りかねない。地球温暖化問題がすでに「待ったなし」の状況にある中で、今度再び歯車が欠けたら、それこそ地球環境にとって致命的な損失となるだろう。このような未曾有の危機を防ぐためにも、「国連」という潤滑油の存在は不可欠だ。今後、各国が円滑に交渉を進め、ポスト京都議定書を実効性あるものにすることができるか否かは、ひとえに国連が強固な調整機能を果たし、有効な具体策につなげることにかかっているといっても過言ではない。「地球温暖化」というかつてない事態に直面してい595